無断借用

 休日、家で午睡を貪っていると、突然トイレの水を流す音が聞こえた。

 そんなもので目を覚ます時点でお分かりだろうが、俺はワンルームに一人暮らしである。同居人なんていないし、来客だって今現在は来ちゃいない。


 しかし転寝うたたねの夢ではなく、水の流れる音はまだ聞こえてきている。

 異常としか思えない事態に跳ね起きると、丁度そこで三点ユニットバスに通じるドアがばたりと開いた。そして閉まった。


 扉は確かに動いたけれど、そこに誰の姿もなかった。

 一瞬むっとして虚空へ向けて、「勝手に使うな。せめて一声かけろ」と言いかけた。が、実際にかけられたら、それはそれで怖い。

 思い直して、やめておく事にした。

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