天井人

 四月からの一人暮らしに備え、不動産屋巡りをしていた。

しかしなかなか希望と折り合いがつく、いい部屋には出会えない。

 眉根を寄せながら歩き回って、やっとこれぞと思える物を見つけた。家賃も間取りも文句なし、駅からも近くてかなりの好物件である。

 先を越される前にと、即日不動産屋と物件を見に行った。


 掃除が入ったばかりなのか、床も家具もぴかぴかだった。風通しも日当たりも良好で、思った以上にいい部屋だった。

 けれどやはり、その部屋はやめる事にした。

 だってふと見上げたら、天井板に沢山の、人の足跡が残っていたのだ。

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