三人禁止

 友人三人で、スキーツアーに行った。貧乏学生につき、深夜バスで行く格安旅行である。

 中途、うらぶれたサービスエリアで休憩になった。

 体を伸ばせるし、ついでに手洗いにも寄ろうと三人で降りた。するとそこには張り紙があった。


『三人禁止』


 暗いので顔を寄せて見れば、そう書いてある。意味が分からない。

 一笑して三人並んで小用を足した。

 終えてふと気づくと、真ん中に居たはずのあいつの姿がない。


「あれ、あいつどこいった?」

「あいつって?」

「あいつだよ、ほらあいつ」

「だから誰だよ」

「あれ? 誰だっけ」


 確かに他にもう一人、誰かが居たような気がする。けれどそれが誰だか思い出せない。

 何とか面影を留めようと四苦八苦するも、記憶はぐんぐん薄れて曖昧になり、やがて何もかも灰色の忘却に霧散した。


「すまん、なんか寝ぼけてたみたいだわ」

「しっかりしろよ」


 言い合いながら二人で戻り、バスは程なくそこを離れた。

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