交替制

 うちの学校の体育館には怪談がある。

 何者かの由来は知れないが、ただひとり、舞台の片隅で膝を抱える生徒の霊が出るのだという。


 部の片付けで遅くなった折、ちょっとした悪戯心で俺は噂の場所に座り込んでみた。幽霊とやらの定位置に居る俺を見て、誰かが騒いだら面白いなと思ったのだ。

 しかし予想以上に誰も気づかない。

 数分で飽きて、もう帰るかと立とうとした。

 が、どうした事か出来ない。膝を抱えた姿勢のまま、体はぴくりとも動かない。

 焦る俺のすぐ背中側で、


「ありがとう」


 そう言って、誰かが立ち上がる気配があった。

 声の主はひどく軽やかな足音で、体育館を出ていった。

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