ささやかな凱歌
友人を見舞いに行った。彼女の病室は2階だったから、節電に協力しようと思い立って階段を使った。
すると薄暗いその階段に、おかしなものがいた。
身の丈十数センチの小坊主である。
ちまっこい体を一杯に使って、2階への踊り場を目指し階段をよじ登っている。私は期せずその背中側に位置取る格好になっていて、坊主がこちらに気づいた様子はない。
このまま何も見なかった事にして立ち去ろう。そう思いもしたのだが、
「やっ! はっ!」
とかけ声をかけながら一段ずつ階段を制覇していく小坊主に、ついつい見入ってしまった。
多分に
結局そのまま見守るうちに、とうとう小坊主は踊り場にたどり着いた。
心底嬉しげに両腕を上げて万歳をし、どうだと言わんばかりにちょこんと跳ねた。その愛嬌溢れる仕草に、不覚にも私は声を立てて笑ってしまった。
はっと気づいた小坊主はこちらを振り向き、薄暗がりなのでよくは見えなかったが、多分真っ赤になったのだろう。
「今に見ておれ! 今に見ておれ!」
地団駄踏みながら
そんな移動方法があるのなら、何もこんな階段に悪戦苦闘する事もあるいまいに。
どうもあの手のモノの考える事はよく分からない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます