不完全燃焼

 一つ先の辻の家が燃えた。一家四人、全員が亡くなった。不審火であるという。

 以来、付近の夜は人通りが絶えた。

 そこにおかしなものが出るようになったからだ。

 全身真っ黒く焼け焦げて、男女の別すらも定かならぬものが現れるようになったからだ。

 熾火おきびのような炎の痕を体に灯し、しかしそれは死にきらず、緩慢な動作でうごめいている。


 見た者全てが口を揃えて言った。まるで何かを探しているようだった、と。

 何を、誰を探しているのかは、言を待つまい。


 幾度かお払いも行われたが無駄だった。今も、それは探し続けている。

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