標的変更

 友人から相談を受けた。

 このところ、毎晩悪夢にうなされているらしい。

 その内容はと聞けば、誰かが自分の心の中に押し入ってきて、自分が自分ではなくなってしまう夢だという。

 呪われているのか恨まれているのか、心当たりはないけれど、とにかく誰かが自分を自分に成り代わろう、自分を乗っ取ろうとしてるのに違いないと半狂乱である。

 私は彼女が落ち着きを取り戻すまで、努めて冷静に応対をした。大丈夫だよ、そんな事ないよ、ありえないよと繰り返し、なだめてあやして帰らせた。


 そうして、ため息をつく。

 あの娘は思ったより勘がいい。残念だけれど、別の子にしよう。

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