やってくる

 部屋でくつろいでいると汽笛が聞こえた。遠く、鐘の音もする。

 間もなく年が終わる。年が明ける。こよみが移ろう。

 くだらない事だ。それはそもそもからしてただの数字である。1の次に2があるように、今日の次の明日があるばかりだ。年が改まったからと言っても、実際何一つ新しくなどなっていない。

 日付も時間もその概念も人が作り出したのに、いつしか人の方がそれに縛られている。ただの概念に過ぎないのに、ないものをさもあるかの如くに感じてしまっている。

 本当に、くだらない事だ。


 もう一度そう思った時、部屋のドアノブががちゃりと鳴った。

 開いたドアの向うには誰もいなかった。けれどかすかに、そして確かに空気の流れる感触がした。


 毎年欠かさずやってくるこれも、きっと同じだ。やはりくだらない概念なのだ。怖がる必要も怯える必要もない。無視していればいい。どうせ何もできない。

 そう、思う事にしている。

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