敷き詰める
急に腹が痛くなって、デパートの手洗いに飛び込んだ。幸い個室はどれも空いていた。
用を足してさて出ようかと思ったその時、笑い声が鳴り響いた。
鳴り響いたとは誇張ではない。声は人が発するとは思えない大きさだった。しかもただ甲高く、男の声とも女の声とも知れない。
それは数秒だけ続き、始まった時と同様に、突然ぴたりと治まった。
おそるおそる個室から覗くと、やはり手洗いの中には誰も居ない。
安堵して踏み出すと、おかしな感触がした。見下ろせば床一面にトイレットペーパーが敷き詰められている。
他の個室を見れば、どこも紙が尽きていた。
まるで子供が悪さをしたかのような有様だが、あの笑い声の間だけで、こんな真似をしおおせるものだろうか。ひどく不気味な気がした。
それからはっと気づいてそこから逃げた。
この悪戯の濡れ衣を、着せられたのではたまらない。
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