秋の月

 夜風の心地いい季節になった。

 風流を気取ったわけではないけれど、買出しがてら、ちょっと散策でもと遠回りをした。

 振り仰げばいい月だ。もうすぐ満月になりそうな銀円は、空の頂で白々と光を反射している。それから、あれ、と思った。

 行きに見上げた月と違うような気がする。

 振り返って空を確かめる。すると後方にも月があった。爪のように細い三日月だった。

 どちらの月も互いの事など知らぬ気に、さやさやと銀色に輝いている。

 無性に怖くなって、家まで走って帰った。

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