爪を研ぐ
頭の
重いまぶたをこじ開けてそちらを見ると、ベッドの足で猫が爪を研いでいた。
私が目を開けたのを察して、猫はついとこちらを見上げた。それから声は出さずに鳴き声の形に口を開いて、それから消えた。
その仕草と毛色で判った。
昔実家で飼っていた
だから、今のは夢だ。もういないあの子が、ここで爪を研ぐわけはない。このところ疲れているから、懐かしい幻を垣間見たのだ。
そう自分に言い聞かせたが、どうも気になった。起き上がって電気をつける。するとベッドの足には、爪研ぎの傷がしっかりと残っていた。
実家とは違い、この部屋は借り部屋である。
もしあの子がまた来てくれるなら、ちゃんと言い聞かせなければ。
そんなふうに思った。
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