大名行列

 遅くなった塾の帰り道、細い通りを歩いていると、向こうからどてどてと妙な音が聞こえる。

 なんだろうと夜闇に目をらすと、やがて街灯の薄い明かりの中に、跳ね歩く大きなが影が見えてきた。

 最初は大人がおかしな仕草をしているのかと思ったけれど、違った。

 身を屈めた人間と見紛みまがうくらいに大きな蛙が、けろけろげろげろとその後ろに普通のサイズの蛙を引き連れて、大行進をしているのだった。

 あまりの光景に頭の中が真っ白になった。

 僕が茫然ぼうぜんとするうちに、先頭の蛙が目の前まで迫って来ていた。間近で見るとやはり大きい。まさに殿様蛙と呼ぶに相応しい寸法だ。

 蛙は足を止めると、僕を見据みすえた。それからゆっくりと瞬きをした。なんだかとても不機嫌そうだった。

 あっと気づいて、僕は脇に避けた。路塀に張り付くようにして道を譲る。

 殿様は満足げにひとつ頷いて、行進を開始した。

 その背中をけろけろげろげろと、たくさんの蛙が追っていった。

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