赤くなる
学校から帰ってくると、家の前で見知らぬお爺さんが踊っていた。
「やあ赤くなった。とうとう赤くなった。赤くなった」
嬉しそうにうちの屋根を見上げていた。
つられて私も見上げた。確かに屋根は赤かった。
けれどそもそもうちの屋根って、何色をしていただろう。
そのお爺さんが見られながら家に入るのは嫌だったので、近所のコンビニに立ち寄って、しばらく立ち読みしてから帰った。
戻ると期待通りあのお爺さんはいなくなっていた。けれど屋根は赤いままだった。
母が帰ってきたので訊いてみた。
「お母さん、うちの屋根の色って何色だったっけ?」
「一々覚えてないわよ、そんなの。赤以外ならなんでもいいでしょ」
アルミホイルを噛んだような、ひどく嫌な心持ちになった。その話はそれきりにした。
今もうちの家の屋根は赤い。
気がつけばこの町内の屋根は、皆赤いようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます