夕立
さっと冷たい風が吹いて、鼻先に水が香った。
一転
強い夕立に追われて、俺は転がるように家へ走る。
自宅まではわずかの距離だったけれど雨の勢いは侮り難く、玄関に着いた頃にはすっかり濡れネズミだった。
髪を手でひと拭いして水滴を払う。すぐ着替えてシャワーを浴びよう。そう思いながらドアを開けた時、おかしな感じがした。
何かが、今俺の横をすり抜けていったような。
薄黒い影が、すっと家の中に入っていったような。
実際にその何かに押しのけられたわけでも、影をはっきりと見たわけでもない。たが空気の動きというか、風の流れというか、ふわりと何かが通っていく感覚だけを確かに感じたのだ。
その不審を突き詰める前に、空が光った。間髪入れずに轟く雷鳴。近い。
「きゃあっ!?」
落雷の瞬間、そんな大仰な悲鳴が聞こえた。俺以外は誰もいない家の中から。
やはり、見えない来客が忍び入っている。
いささかならず図々しい気がしたが、この雨を避けたい気持ちは分からなくもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます