　それは一見、幸福な結婚式だった。

　花嫁は幸せそうに笑っている。花婿も幸せそうに笑ってる。親族も友人一同も、皆心からの笑顔を浮かべていた。

　参列者からの祝福を受けながら、新郎新婦は教会の扉にたどり着く。この後は外で記念撮影の予定だった。

　ふたりが扉を押し開けて、光が教会内に差し込んだその一瞬。

　逆光で透けた純白のドレスのスカートの中に、黒く無数のデスマスクが浮かんで見えた。

　私は何も言わなかった。

　誰も何も言わなかった。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい