友達ができた
学食の二階から見下ろせる構内のベンチには、女の子がいる。
さらりと短く切り揃えた髪の彼女は、いつもひとりぽつんとそこに座って、ぼんやり学食に出入りする学生を眺めている。
授業でもサークルでも接点のある相手ではないし、そもそも余計なお節介だろうからと声をかける事はなかったが、昼が学食の時はまず見かけるので、ちょっと気になっていた。
そうして様子を窺っていると目が合う事もあって、そんな時はなんとない素振りでこちらが視線を外した。
。
数ヶ月が過ぎ、夏休みも明けた頃、その子にも友達ができた。
やはり見かけるのは昼、俺が学食を利用する時分だ。同じベンチにふたりで並んで座るようになった。
ただちょっと悪いが、お友達の方へはいい印象を抱けなかった。
女の子であるのに、どこか服装はだらしない。髪も長いというよりは手入れしてないという雰囲気。有り体に言ってしまえば清潔感がない。
よく一緒にメシを食う友人に話を振ってみた。
「ああ、あの髪の長いのか。あいつ最近よくあそこにいるな。授業被ってるのがいくつかあるけど、ちょっと気味悪いよな。話した事はないけど、ちょっとな」
どうやら俺の印象だけが悪い、というわけではないようだ。
「にしてもあそこ、幽霊が座ってるなんて噂あったけどさ。あいつの方がよっぽど幽霊っぽいよなあ」
「なんだよそれ?」
「ああ、お前知らなかったのか。たまにあのベンチに、どの学部でもない、誰も知らない生徒が座ってるんだとさ。まあそもそも『誰も知らない』なんてどうやって確認したんだよって話だけどな。お前、よくあそこ見てるからな。知ってて幽霊見ようとしてるのかと思ってたよ」
じゃあ、俺が見ていた彼女は。
もう一度外に目をやった。
髪の長い方は媚びるようにしなだれて、何か彼女に囁きかけている。つまり、あの女にも見えているのだろう。
ふと、彼女がこちらを見上げた。逸らす間もなく視線が絡んだ。
そのままじっと見つめてくる瞳は、どうも助けを求めるようだった。
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