からから
格安で入れた新しいアパートに越してきておよそ一月、気がついた事がある。
毎朝。一々確認していないので正確な時刻は断言は出来ないが、大体午前4時か5時くらいだろうか。
家の側の道を、からからと音を立てていくものがある。
音はとても軽い。中身が空洞の金物、例えば鉄パイプか何かを引きずったら出るようなものだ。
人が歩く程度かそれより若干遅いくらいの速さで、からから、からから、からから。
毎朝、決まって通り過ぎていく。
1階でなければ耳に届きもしなかったろうし、届いたとしても眠りを妨げるには遠い程度の、ごくごく小さな音色。
何者であるのか、確かめた事はない。
少しだけ雨戸を、カーテンを開けて外を見ればいい。それだけで解決する話だ。頭では分かっている。
でもその「それだけ」が出来ない。
見たら、見られてしまう気がして。
からから。からから。からから。
軽やかなそれは、今日も緩慢に行き過ぎていく。
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