槽中
夜半、ふと目覚めて手洗いに立った。
小用を足して水洗する。壁掛けのタオルで手を拭う。ドアを閉めようとしたその時。
ぽちゃん、と水音がした。
飛沫が跳ねた程度にしては、やけに大きな音だった。タンク内に何か詰まったのだろうか。もしそうならば、後に回すと面倒そうだ。処置は早い方がいい。
そう考えて、まだ手洗いの水が流れるままのタンクの上蓋を持ち上げた。作った隙間から内側を覗く。すると。
目が在った。
目が合った。
僕は黙って蓋を戻した。
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