第二話『炎』

狼に追いかけられて走っている途中で私は、はたと気がついて。

足を止めた。


「キマイラって、そういえば、かなり強くない?」


そう、戦えばよかったのだ。


「え、ヤギちゃん戦うの??」

と、空気読めるマイルドイケメン風味のヘビくんが言ってきた。


流石空気の読める男、ヘビ。

足を止めただけで、女子がやりたいことがわかるとは、流石のマイルドイケメン。


まぁ、普通の女子は狼と戦ったりしないんですけどね!!


「そうよ!そういえば、キマイラってかなり強いわよ!!」

と私はヘビくんに言った。


私の持てるファンタジー知識を総動員した結果。

キマイラって最強クラスの幻獣だという結論に至ったのだ。

最強なら戦ったほうがいい。


「戦うったってどうするんだよ」

とライオンが言ってきた。


coolに気高く、そう言った。

いや、あなたもっとやる気出しなさいよ。

ライオンなのよあなたは、百獣の王よ!!


「あなたが戦うに決まってるでしょ!」

と私は言う。


このメンバーのメイン戦闘要員はどう考えてもライオンだから!!

ライオンにビシバシ働いてもらわないと全滅だから!!


「えー、イヤなんだけど!」

と気だるそうにイケメン風ライオンが言った。


「『イヤなんだけど』じゃないわよ!!」

と私は、やる気のなさそうな、ライオンに言った。

やる気なさそうだけど、実は最後は頑張るイケメンであることを祈る。


「あなた、火を吹けるはずだから、パパっと吹いて倒しちゃって!!」

と私は作戦を説明する。


そう、ライオンが火を吹いて、一撃で倒す作戦だ!

それなら、簡単!


「いやいや、火とか吹けないって、ライオンだよ?俺?そういう機能ないから!」

とライオンは自分の能力を説明する。

ライオンもライオンで現状がなかなか分かってないっぽい。

みんな、この世界でのことは、これから試していくしかない。


「いや!!あるから、ただのライオンじゃなくて、キマイラだから!!」

と説明する私。


キマイラだからできる!って説明凄いな、と自分でも思う。


「とりあえず吹いてみて!軽くでいいから、軽くで」

と、最初はあくまで簡単に、徐々にハードル上げていきましょうの精神で、レベルアッブをしていくのだ。

大人の階段ではなく、キマイラの階段を順番に上がっていくのだ。


「どう吹けばいいんだよ?」

と、ライオンはまた気だるそうに言った。


確かにどうすればいいかわからないわ。

こういうのは気合じゃないかしら気合。

念ずれば通ずる物だわ。


「念じて吹くのよ、炎でろ〜って」

と私は説明した。


もちろん私にも分からないけれど

何も試さないで死ぬよりずっといい。


「そんなんで出るのかよ?まぁ、一回試してみるか。」

と、しぶしぶながら、ライオン氏はやってくれることにしたらしい。

なんだかんだあったが、やってくれるなら心強い。


「ふぅ〜」とライオンが軽く息を吹いた。

確かにそんなんで、出るのかなぁ、と思うような軽い息だった。


ところがそれで正解だったらしい。

そう、ライオンが炎を吹いた。


辺りが火事になった。

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