なにかやりましたそうですよ、堀田さん
「……なにかやりましたそうですよ、堀田さん」
とまた意識を失ってしまったベッドの上の男を見下ろしながら、晶生は呟く。
「知らん。
俺は霊現象は信用しないからな」
と言ってくるので、
「待ってください。
今のは霊現象ではないですよ」
と晶生は言ったが、
「いや、なんだかわからない霊の作用っぽいものでしゃべったろ、今っ」
と堀田は言い返してくる。
「いや……それだと、思いっきり、霊現象を認めてることになりますよね~」
霊は居ないというのなら、今のは、ただ男が起き上がって、罪を白状したことになるのだが、と思いながら、堀田を見ていると、
「わかったよっ。
どのみち、こいつのことはまだ調べてるっ。
そのうち、なにか出てくるだろうよっ」
と何故か喧嘩腰に言ってきた。
真田が、
「俺がやりましたって言いましたよね。
じゃあ、こっちがあの女の人を殺した人で……」
と言い出し、
「須藤晶生っ。
こいつを連れて、とっとと帰れっ」
と堀田に、真田とともに叩き出されそうになる。
そのとき、晶生の携帯が鳴った。
「あ、切るの忘れてました。
すみません」
と言いながら、機器に影響がなさそうな隅の方に行って、それを取ると、沐生だった。
何故か、携帯を取ったときの顔でそれが誰だか堺にはわかったらしく、
「ちょっとっ。
仕事中、なに私用電話なんかしてんのよって言ってやりなさいっ」
と言ってくる。
いや、仕事中、思いっきり脱線している貴方はいいのですか、と思っていると、相変わらずのよく響くいい声で沐生は言ってくる。
『笹井さんから聞いたんだが。
今度、遠藤のホテルが解体されるそうだ』
「えっ?」
と思わず声を出してしまった晶生をみんなが見る。
堺など、すすすすっとやってきて、携帯に反対側から耳を当ててくる。
「遠藤さんの話ですってばっ」
と晶生は堺を押し返した。
遠藤のホテルが解体。
ついにこの日が来たか、という感じだった。
幾ら頑張っても、建物のあの劣化具合ではそう長くは持たないだろうと思っていたが。
ホテルが解体したら、あの建物に、あの場所に固執している遠藤はどうなるのだろう。
消えてしまうのか、それとも――。
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