第15話 父アダムとサタン
その名前にホーペたちは振り返った。
その視線の先には、大きな熊が立っていた。
「あの時の!大きな熊さん!?」
なんでここに!驚くホーペをよそにイヴはすかさず熊に向かって、小さな杖を投げた。
しまった!!という顔でサタンは走ろうとするが、ホーンにかまれた足は言う事を聞かない。
「ありがとうイヴ。これで、俺も少しはましに使えるよ。」
熊は話していくうちに、人間の姿になった。
「フゥー。この姿、何十年ぶりだろう。」
ホーペの髪型と全く同じなうえ、まるで、ホーペを成長させた大人のような男を見て、ホーペは驚きを隠せないでいた。
「ホーペ。あなたのお父さんよ。」
牢屋越しにイヴがいうと、ホーペは男の方を向いて固まった。
「この人が、僕の、おと…」
アダムはフッと笑い
「話はあとだ。ホーペ。まずは俺はこいつと決着をつけなきゃならんのでね!!」
イヴから受け取った杖を大きく振り、ホーペよりも数倍大きなイナズマの塊を杖先に集めた。
「さあ!サタン。よくも俺の女と子供に手を出したな!」
覚悟はできてるな?そういって、アダムはサタンに問いかけた。
片腕をなくし、足を引きずりながら、サタンはよろよろと立ち上がり、アダムに近づく。
「いつもいつも、お前は私の邪魔を…お前さえ、お前さえいなければ!私はあんなみじめな思いなど…!!」
バチバチといいまでになく強力なイナズマを身体にまといながら、ユラユラとアダムの元へ歩む。
「俺はなにもしてないさ。恨むなら自分の父親に言ってくれ。大魔王サタンにな!」
「黙れ!!!!」
サタンが体中のイナズマを放つと、すかさずホーンとホーペは風をおこし、イナズマを振り払った。
「ナイスだ!ホーペ、ホーン。ついでに母さんのカギも壊してくれ!」
アダムは大きく光るイナズマの球をサタンに投げ放った。
それと同時にホーペとホーンはイヴの元へ駆け寄り、大きく頑丈な鍵穴に向かって、炎をまとったイナズマを放った。
―バチバチ!!…ガシャン!
「ホーペ!!」
「母さん!!」
イヴはやっと牢屋から解放され、ひしっとホーペに抱き着いた。
サタンはというと、アダムが放ったイナズマにくるまれて、バチバチと身体を光らせている。
「…ん?効かない、だと?」
アダムが眉間にしわをよせてサタンを見ると、サタンは不気味な笑みを浮かべていた。
「愚か者め、アダムよ。お前と私の母は同じ魔女だ。お前の光など私には通用しない!!」
身体にまとったアダムのイナズマを辺り一帯にサタンは振り散らした。
―ガタガタガタ!!!
いたるところにイナズマは当たり、牢獄の壁や物が崩れ落ちた。
「お前など、カエルのようにつぶしてくれるわ!!」
落ちたがれきをサタンは魔力で浮かび上がらせアダムに向けて投げ飛ばした。
―アダム!!!
―父さん!!
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