第14話 母親との再会


光に包まれた三人は、黒い煙の映像に映っていた、暗い牢獄へ光と共に移動した。


「本物だったんだ…」

「半分疑ってたけど…」


三人がそうつぶやき、辺りを見渡すと、奥の牢屋の中にいる金色の髪の女性が目に留まった。


「母さん!!!!」


「!?…ホーペ!!ホーペなの!?」


とうとう、ホーペは、母イヴの元へとたどり着いた。


「ホーペ…よく、無事で…」


涙を流しながらイヴは檻越しに、ホーペの頬を撫でた。


「今、ここから出してあげるからね!」


ホーペは大きな牢屋のカギに手をかざした。


―そのとき。


―バチィ!!


ホーペとカギの間に赤いイナズマが走った。

そして背後からおぞましい声が響き渡った。


「よく生きてたな、小僧。」


サタンが魔法の杖をホーペに向け、恐ろしい笑みを浮かべた。


「このっ…!よくも!母さんにひどい事を!!絶対に、許さない!!!!」


ホーンとビオラもサタンに向けて、強い覇気を醸し出した。


「フンッ。チビネコとノライヌを連れたちっぽけな小僧が、私に勝てるとでも思うのか。おもいしらせてやるわ!!」


サタンは魔法の杖をビオラに向けた。

ビオラの周りに赤いイナズマがつきよせる。


―バチバチバチィ!!!


「ビオラ!!!」


ビオラの身体にイナズマが巻き付き、空中で縛られたあと、牢獄の固い壁に投げつけられた。


「なんで!僕を狙わないんだ!!」


すぐにビオラの元へ駆けていき、生気を送り込みながらホーペはサタンへ叫んだ。


「ハハハ!!仲間が次々に死んでいく様を見て、青ざめるお前の顔が見たくてなぁ!」


―ヒュンッ!


サタンの後ろから突然、青い光が横切り、弱ったビオラを包んだ。


「くそっ!まだそんな力があったとは…邪魔をするな!!」


ビオラに向けて、生気を放ったイヴを怒鳴りつけながら、サタンはイヴに向かって片手を突き出すと、黒いオーラを出した。

黒いオーラはイヴを包み、ゴホゴホとイヴは苦しそうにせきをしながらうずくまった。それを見たホーペは髪を奮い立たせ


「母さんに何をする!!!」


と大きく叫んだ。

その叫び声は濃いイナズマと化して、サタンの首元に巻き付いた。


―バチバチバチッ!!


濃いイナズマはサタンの首をギリギリと締め付ける。


「クッ、ガキにしては、強い魔力を使うじゃないか。」


―おもしろい…


そうつぶやくと、サタンはマントをひるがえし、強い風を巻き起こした。


「ビオラ!つかまって!!」


生気を取り戻したビオラは、吹き飛ばされないよう、ホーペにしがみついた。


「ホーン!この風を!身体に吸い込むんだ!!」


ホーンとホーペは、風に立ち向かい身体全体で受け止めると、その風を自らの身体の中に取り込んだ。


「なんだと!!」


サタンは驚き、赤黒い目を見開いた。


「ボクたちには風なんて効きやしないよ!!」


ホーンがふんっと鼻を鳴らした。

サタンは眉間にしわを寄せ、険しい顔をしながらも不気味な笑みを浮かべた。


「そうか…まあいい、それなら…!」


両手を広げたくさんのコウモリを呼び寄せた。


「二度も同じ手に引っかかるものですか!!」


ビオラはしっぽを小刻みに振り、コウモリへ炎を飛ばし、次々に燃やしていく。

そしてホーペが大きく手を後ろから振り下ろすと、イヴを包んでいた黒いオーラを吹き飛ばした。


「何度しても!同じことだ!」


サタンは叫びながら片手をイヴに向けると、イヴは懐から小さな杖を取り出し、サタンの杖に向けて強い炎を放った。


―ボゥ!!


「っ!?」


サタンは思わず杖を離した。

その杖はごうごうと燃え上がり、ついに灰へと姿を変えた。


「これで、あなたは魔法が使えない。」


にやりと笑うイヴに、サタンは焼けた片手を掴みながらにらみ返した。


「…忌々しい!そんなところに杖を忍ばせていたとはっ!!」


イヴはそのまま小さな杖を振り、ホーンとビオラに強い光を振りかけた。

ホーンの身体はみるみる大きくなり、大きなオオカミに、ビオラの身体は立派な虎へと変わっていた。


「わお!!」

「すごいわ!!」


ホーンもビオラも、自分の変わった姿に驚いた。


「ホーペ!今よ!!」


イヴが叫ぶと、ホーペたちはいっせいに、サタンへ向かって走り出した。

ホーンを先頭に、ビオラ、ホーペと続き、ホーンはサタンの足に大きな牙で噛みついた。ビオラは鋭い牙でサタンの太い腕へ噛みつき、ホーペはサタンの心臓めがけて、大きなイナズマを放った。


―ウガアアァアアァアア!!!!!


サタンはその場に崩れ、うめき声をあげた。

ホーンとビオラはサタンからいったん離れ、ホーペはイヴの元へと駆け寄った。


「…っうぐ!そうは、させん!!」


サタンが大きく片手を振り上げ、ホーペへ向かって大きな炎を放った。

イナズマをまとった大きな炎は一直線にホーペへ向かう。


「ホーペ!!!!!!」


―ゴォオオオオオ!!!


一匹の虎がホーペの前で叫び声をあげながら燃え上がった。


「ビオラ!!!!!!」


虎になったビオラは、その俊足で、炎からホーペを守った。


―自分の命を犠牲にして…


「ビオラ!!ビオラッ!!」

「ホーペ!今近づいたら、あなたも炎に巻き込まれてしまうわ!」


ビオラに近づこうとするホーペの服を掴み、イヴは必死に引き留める。

ごうごうと燃える虎の身体は、徐々に小さくなり、元の猫の姿へ戻った。

ホーンは駆け寄り、竜巻を起こし、ビオラの身体に残った炎を取り払った。


「ビオラ!!」


ホーンが泣きそうな顔でビオラを見下ろすと、ビオラは小さく笑って


「私…ちゃんと、役に…立った、でしょ…」


そういって、静かに目を閉じた。


「ビオラッ!!!!!!!!」


ホーンは力尽きたビオラにそっと鼻をすり寄せ、やさしくくわえると、一番安全そうな場所へと、そっと置いた。

そしてすぐさま、サタンに向かって走り出した。

怒りと悲しみに狂ったように、竜巻とイナズマを身体にまとわせながら、ビオラが噛みついたサタンの腕をかみちぎった。

サタンは片方だけになった手をホーンの腹に当て、大きな電撃をくらわした。

バチバチ!と鳴るイナズマの音と、悲痛な鳴き声をあげるホーンに、容赦なくイナズマは身体をむしばむ。


「ホーン!!!」


ホーペが叫ぶと、ホーンは勢いよく身震いをし、自らイナズマを振り払った。


「ホーペ!!」


ホーペは母の元から離れ、ホーンに駆け寄った。


「キミは、お母さんを助けに、来たんじゃないのかい?」


苦しそうに笑うオオカミになったホーンを見て、ホーペはたまらず叫んだ。


「ホーンもビオラも僕の大切な家族なんだ!!見捨てることなんて、できないよ!!」


そう叫び、ホーンへ向かい涙しながら生気を送る。

その後ろのほうでは、横たわったビオラの姿が。

ホーペは悔しくて涙が止まらないまま、ビオラに自分の上着をかけた。


「ビオラ…ありがとう。」


ビオラから視線を離せないままでいると、ホーンが叫んだ。


「ホーン!!サタンが!!」


ホーペがイヴの元を去った隙に、サタンは足を引きずりながらイヴの元へとたどり着いていた。

狂気に狂ったその目はイヴの事をとらえて離さない。


「お前も私に逆らうというのなら…一思いに、殺してくれる!!!」


イヴに向かって鋭い爪を向けたそのときだった。


―まて!!


飛んできた青い光がサタンの爪を折り、サタンはその光を見て言った。


「また、私の邪魔をするのか…」


―アダム


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