第13話 禁断の果実

―…”ホーペ!!しっかりして!!目を覚まして!!”


―…”ホーペ!!起きてよ!!ホーペ!!”


重い瞼を開けると、涙を流しながら、体中をゆすってくるビオラとホーンが目の前に飛び込んできた。


「…あれ…!?リンゴ!!リンゴは!!?」


いきなり飛び起きたホーペを見て、ビオラとホーンは腰を抜かして驚いた。


「ホーペ…!!どこ行ってたのよ!!すっごく心配したんだからね!!」


ビオラはおいおい泣いてホーペに縋りついた。


「扉が消えちゃったと思ったら、しばらくして、いきなり目の前に倒れたホーペが出てくるわで、心臓が止まっちゃうかと思ったよ!!」


鼻水をすすりながら、ホーンは怒った。


「ごめんよ。母さんを助けるために、アイツと契約してきたんだけど…あ!あった!」


足元に転がっているリンゴを手に取り、ホーペは傷がないか確かめた。


「何を契約したの!?」

「そのリンゴと引き換えに?」


口々に聞いてくる二人に、ホーペは、ばつが悪そうな顔をした。


「僕の、残りの命半分と、なんでも願いが叶うリンゴを引き換えに、取引したんだ。」


それを聞いたビオラとホーンの顔は真っ青になった。


「あなた!!今、自分の命が残り、どれだけか分かっていっているの!?」


ビオラは怒りをあらわにして、ホーペを怒鳴りつけた。

ホーンはというと、自分に与えられた命の半分が、ホーペの命だという事と、またホーペは大きなものと代償に自分の命を犠牲にしてしまったという事に絶望していた。


「でも!これで、母さんに!やっと母さんに会えるんだよ!羽根がなくちゃ、母さんの居場所はわからないし、助けられもしない。それに…」


怒るビオラと悲しみに暮れるホーンを抱きよせて、ホーペはフゥとため息をついた。


「二人と過ごせた毎日が、何よりも楽しかったし、あとは母さんを助けられたら。僕はそれでいいんだ。」


そういって二人をぎゅっと抱きしめた。

ホーンはズビズビと鼻をなしながら泣いて、ビオラはホーペの胸に顔をうずめた。


「残される身にも、なりなさいよ…」


そうつぶやき、ビオラはホーペの事を強く抱きしめた。

ホーペはビオラとホーンの頭を優しくなでると、二人から離れ、リンゴを見つめた。

その様子を見て、ビオラはホーペの肩に飛び乗り、ホーンはホーペの足にしがみついた。


「そのリンゴ、偽物だったら、容赦しないからね!」

「またボクたちを置いていったら許さないよ!」


二人の言葉に、ホーペは強く頷き、


―”お母さんのいる場所へ”


と強く念じ、リンゴを一口かじって食べた。

すると、ホーペたち三人の身体はみるみるうちに、光に包まれ薄くなってゆき、大きな屋敷の広間から三人の姿はなくなった。


ただ一つ。食べかけのリンゴを残して。

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