第7話 命を分けた仲間
「それで、ずっとさまよっていたところ、偶然僕たちと会ったんだね。」
ホーンの過去を聞きながら、ホーペは枝を割り、火をおこしていた。
あれからホーンに案内された山に入り、ホーペは二匹を連れて山の奥へとたどり着いた。
「ボクはもう人間なんて信じられないんだ。」
うずくまって鼻をすするホーン。
「見ての通り、僕は人間なんかじゃない。汚れた子さ。」
ホーペがフゥーっとホーンへ向けて息を吹きかける。
その息と一緒に風に舞う枯れ葉がパラパラと花びらになってホーンの頭上へ舞い散った。ホーンはホーペの事をじーっと見つめ、「バケモノだ。」と呟いた。
ホーペは怒ることもなく、「そうとも言えるね!」なんて笑うのだった。
夜になり、三人ともいつの間にか寝てしまっていたとき。
―バァン!!!!!
大きな銃声と共に山の鳥たちがバサバサと羽ばたいた。
「何かしら!?」
ビオラが飛び起きると、ホーペは静かに言った。
「狩人が来たみたいだね。ここにいたら見つかってしまう。」
ホーンも一緒に逃げよう。そう振り向くと、ホーンはガタガタと震えていた。
思い出してしまったのだ。あの日の事。おじいさんと別れた日の銃声の音…。
ホーペはそのことに気付いて、必死にホーンに呼び掛けた。
しかし、ホーンは混乱状態に陥ってしまい、銃声の鳴った方へ走り出してしまった。
「ホーン!!!」
ビオラが追いかけようとしたのを見て、ホーペはは叫んだ。
「ビオラ!僕の肩につかまって!絶対離しちゃだめだよ!!」
ビオラを肩に乗せると、ホーペは片手を振りかざして、思い切り振り下ろした。
―ゴォォオオオオオオ
強い風が押し寄せて、風はビオラを乗せたホーペをホーンの元へと送ってくれた。
「あなたってなんでもできるのね!!」
しがみつきながら叫ぶビオラににホーペは
「なんたってバケモノだからね!!」
と返しながら風と共に走った。
山の草木をかき分けながら走り去ったホーンの元へと急ぐ。
ホーンの後ろ姿が見えた!その時だった。
―バァン!!!
またも銃声の音。
そのときホーペの目に布のようなものが前から吹き飛んできた。
あわててビオラが取りのけホーペに渡す。
「ホーンのスカーフだわ!!」
ビオラが叫ぶと、ホーペは「もっと早く!!!」手を仰ぎ風を起こした。
白い大きな物体が倒れているのを見つけ、ホーペとビオラは風から飛び降りて駆け寄った。
ホーンは狩人に見つかり、獲物と思われ撃たれてしまった。
お腹の辺りからドクドクと血が流れる。
周りを確認すると、狩人は獲物じゃないことに気付き立ち去ったようだ。
ビオラは泣きながらホーンにすがりつく。
一刻を急ぐホーンの容態にホーペは必死に考えた。
死に近いホーンをどうしたら助けられるのか。
そのとき、ホーンに泣きつくビオラが目にとまり、
―これしかない。
そうホーペはきめた。
「ビオラ。ビオラはホーンの事が大事かい?」
ビオラはホーペの言葉を聞いて振り向き
「もちろんよ!!早く!!今なら!まだ、まだ!間に合うでしょ!?」
その言葉を聞いたホーペは胸に手を当てながら微笑んだ。
「ビオラ。君の命の半分。そして僕の命の半分。ホーンにあげてもいい?」
その意味を理解しらビオラもまた、胸に手を当て泣きながらも笑みを浮かべ
「喜んで、捧げるわ!」
そう強く言った。
ホーペがホーンの腹に手を当て、ビオラも習うように片手を当てた。
ホーペが生気を送り出すと、ビオラの身体は淡くひかり、その光はホーンの体内へ吸い込まれていく。
そしてホーペからは青く強い光がホーンに送られ、その光もまた、キラキラとホーンの中へと消えていった。
二人の生気が送られたホーンの身体の傷はふさがっていて、絶え絶えだった息も、スゥスゥと安定した寝息に変わった。
「良かった…」
ビオラがフゥーと息を吐くと、ホーペはトスン、とその場に座り込んでしまった。
あわててビオラが駆け寄ると。
「ちょっと、いつもより力を使いすぎただけさ。大丈夫だよ。」
微笑みながら、泣き出すビオラを抱きしめた。
―辺りが明るくなり、光が差し込む。
ホーンはパチリと目を覚ました。
「ホーン!!」
「目が覚めたかい?」
上から覗き込みながら喜ぶ二人にホーンはきょとんとしている。
「あれ…、ボク、あの時…」
―そう。あの時、狩人の銃弾に当たって、狩人がやってきた。僕を見た後すぐ去ってしまって、だんだん気が遠くなる中聞こえたんだ…―
―”ビオラ。君の命の半分。そして僕の命の半分、ホーンにあげてもいい?”―
―”喜んで、捧げるわ!”―
ホーンが二人の顔を泣きそうな顔で見上げた。
二人は目を合わせてニッコリ笑い。
「忘れ物!!」
「これだけはつけとかなくちゃ!でしょ?」
口々に言って、ビオラが慣れた手つきでホーンの首にあの時、警察官から巻いてもらったように、スカーフをつけてくれた。
「もう、どっかに行ったら許さないんだからね!」
そういってホーンに抱き着くビオラ。
「もう、きみはひとりじゃないんだ!」
そう明るく微笑むホーペ。
ホーンは今度こそ、幸せになると心に誓い、涙を流すのだった。
その後、ホーンはホーペの事情を聞いて
「命の恩人で、その命の傍ら。ボクでよければお供させてください!」
ホーペに
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