Have dead too
白夜が目を覚ますと周りは少し暗い。
車はどうやら止まってるらしい。
体を起こして周囲を見回す。コンクリートの柱に数字などが書いてある。又、他の車も停まってる事から、ここは駐車場だろう。暗さから見て地下と確認できる。
「あれ、怜奈は?」
前部座席を前に乗り出し確認する。そこに怜奈の姿はない。
「何処に行ったんだ。あと、此処は何処だ。」
頭を抱えて考えていると白夜の視界に見覚えのある格好が入る。
スーツ姿であの高身長。怜奈で間違え無いだろう。
怜奈は車に近づいてくると、白夜が起きているのに気がついて首を傾げてる。白夜が起きているのに驚いているのだろう。
怜奈は紙袋を持っている手とは逆の方のから、ポケットの中の鍵を取り出し車を開ける。
「おはよう、ハク。まさか起きてるとはね。」
怜奈は白夜に目覚めの挨拶をしながら乗り込み、紙袋を助手席に置く。
「怜奈、どこ行ってたんだよ。つーか、ここ何処だよ。」
「買い物よ。手土産用意するの忘れてたから、買いに来たの。」
怜奈は右手で紙袋を指さす。紙袋には大手老舗和菓子メーカー『和歌』のマークが印刷されている。
「土産ってあの人に出しても危険だからって食べれないじゃないか。」
「これは執事の郷田さんのよ。おばあちゃんは食べれないけど、さすがに国家元首に会いに行くのに、手ぶらで行けないわよ。」
怜奈は袋を固定すると、鍵を回しエンジンをかける。ギアを入れ、アクセルを踏み発進する。
駐車場を出ると赤い夕焼けがかった空がふたりを迎える。
車は大通りを抜け、車通りの全くない道に出る。しかしその道は狭いという訳ではなく、とても広い。車が4台くらい通れるであろう広さだ。
その道の先には大きな門と左右の端が見えない屋敷がある。
この屋敷こそが神聖日本国帝国元首の宮殿である。
車は門の所まで着くとそこにいる警備に止められる。
警備員が車に近づいてくる。怜奈は窓をあける。
「ご要件とカードを提示お願いします。」
若い警備の人が確認をしてくる。
「要件は会合。カードは……あれ?…。」
怜奈が自身の服のポケットや口を確認している。
怜奈の様子に気づいた白夜が前に身を乗り出す。
「どうした。まさか忘れたのか。」
聞く白夜の口は少し緩んでいて笑いをこらえているのがすぐわかる。
「…そのまさかよ。おかしいわね。ポケットに入れたと思ったんだけどね。」
「しかたねーな。俺のを使え。」
白夜はスーツの右ポケットを漁る。
…左ポケットを漁る。
……胸ポケットを漁る。
………内ポケットを漁る。
様子のおかしい白夜に気づき怜奈が声をかける。
「どうしたの、ハク?まさかハクも忘れたの?」
「…はい。」
「はぁ…そんな事だろうと思ったわよ。」
怜奈はあらかじめ予想していたのか激しく落胆はせず、小さくため息をついた。
白夜は椅子の上で小さくなっている。
「ねぇ、君。警備隊長の加藤さん読んで来てくれる。彼に会えば話し通じると思うから。」
若い警備員は少しうつむき、口を小さく開く。
「加藤隊長はお亡くなりになりました。」
「「えっ」」
ふたりの口は同じように驚き、そして顔を見合わす。
「病気だそうです。急性の病気で、何もできなかったそうです。」
警備員は亡くなり加藤の事について話す。
ふたりは顔を警備員に向け、聞いている。そして聞き終わった後のふたりの顔は表情は変わらないものの、暗いオーラをまとっていた。
ふたりが固まっていると、敷地の遠くの方から人が走ってきた。
スーツ姿の人だが、腰には警棒を携えている。しかも、女性だ。
「姉御どうしましたか。」
その女性は怜奈に声をかける。ハキハキとはっきりした声で。
「あぁ、カード忘れちゃったのよ。なんとかしてくれない。真耶。」
怜奈はには先程のオーラは残っておらず、疲れた口調で女性に返した。
真耶と呼ばれた女性。本名は久慈 真耶。
神聖日本帝国軍宮殿警備隊副隊長で、亡くなった加藤の次の地位にいる女性だ。
そして、怜奈を姉御と敬っている。
「あー、なるほど!私の権限で入っていいですよ!」
真耶は怜奈に答えるとそのまま若い警備員に向き直った。
「姉御達は安全な人だ。よって通す。いぞんはないな。」
「ハッ。」
若い警備員は敬礼をすると再び門の前に戻った。
「それじゃ姉御、私はこれで。」
真耶も奥に走っていく。
車は真耶とは別の報告に走りだす。
「慣れないな…。親しい人が死ぬと言うのは。」
「えぇ…。」
白夜は小さく言葉をもらす。それに怜奈も小さく頷く。
白い黒豹 モネルナ @Moneruna_Artist
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