第2幕 6話
「……俺の出番、なかったな」
「俺らも変身損だぜ」
ボソッと俺がつぶやくと、マスコットたちが同調するように頷いた。
「はー。相変わらず、あいつだけは何考えてんのかわかんねぇな」
大きなため息をつきながら、青いやつは後輩の隣に立った。
「先輩……助けていただいてありがとうございました。あと……足を引っ張ってすみません」
マスコット二匹を抱えて、後輩は頭を下げた。
「あ? あー……気にすんな。ただ、いきなり飛び込まれると、さすがの先輩もビックリしちゃうぞ」
「……気をつけます」
少し落ち込んでいる様子の後輩の頭を軽く叩き、青いやつは俺の方を見た。
「……で? こいつは?」
“こいつ”。
俺はカチンときた。
「新人だぜ」
「ついこの間現れたって話だ」
「まだグループは組んでないらしい」
「お前らの敵じゃねぇよ」
マスコット二匹が口々にそう言った。
ますますカチンとくる。
敵じゃない、だって?
「ふーん……俺にはそう見えないけど。お前らの見誤りじゃね」
「何だと!」
「少なくとも今のお前らに勝てるのはあの忌々しい三人組だけだ!」
怒りだすマスコットたち。
「悪いな。この化け物たち、自分の情報収集力を過信しているんだよ。気を悪くしないでくれ」
「おい! 過信ってなんだ!」
「俺たちの情報に誤りはない!」
子犬みたいにマスコットたちが吠えだしたので、赤いやつがさっきのバケツに二匹を押し込んだ。
「ぎゃー!」「わー!」という悲鳴が聞こえてくる。
鬼か……
「……そのー、何だ。こいつらのことは気にしないでくれ。そういやお前は何て言うんだ? 俺は伊予」
「先輩」
赤いやつが即座に口を挟んできた。
「本名を名乗ってはいけないというのが、魔法少女のルールです」
……マジか。
思いっきり名前知られてたけど……俺……
「ああ……そっか。魔法少女名を言えばよかったっけ? そういや俺たちって、何て名前だっけ」
「先輩がわからなければ、俺にもわからないです」
「伊万里がわからないなら仕方ねぇな」
……何言ってんだ……こいつら……
こんなやつらが……
「一位有力候補……?」
俺の気持ちを察したかのように、足下でアザミンがボソッとつぶやいた。
ああ、全く。その通りだよ。
「まぁ、いっか。名前なんて、どうでもいいや。それより俺が知りたいのは」
ニヤリと、青いやつが笑みを浮かべる。
「アンタが強いのかどうかだ」
ゾワッと、背筋に寒気が走った。
「……試してみるか?」
俺は挑発に乗った。
「そうだなぁー。本当ならそうしたいとこだけど、あんまり時間ねぇしな。また今度な」
先程感じたプレッシャーはどこへやら、気の抜けた顔になる。
「よぉーし、帰るぞ! 伊万里! 腹減った!」
「はい。今日はシチューです」
「シチューかぁ。いいねぇ」
謎の会話を交わしながら、やつらは俺に背を向ける。
が、青いやつがもう一度振り向き、こう言った。
「じゃーな。雨宮睦月クン」
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