第2幕 3話

ナナ君ほど爽やかな笑顔を見せる人間はいないと思っているが、表現上爽やかという言葉を使っただけだということをわかっていただきたい。

「先輩の力は、天候を操ることができます。それが故に、感情が昂ぶるとあのように制御できなくなってしまうこともあるんです」

 つまりあれは、無意識のうちにやっているということか。

「……ところでお前は誰なんだ」

「一年の九龍雷火です。同じく、メンバーのうちの一人です」

 フラッシュフィッシュか……!

 一年っつーことは、双葉や月影と同じだな。

「アマリリスもとい雨宮睦月さん。今の先輩に何を言ったって無駄ですよ。誰にも止められない」

「なぜそう言い切れる?」

 こいつもまた、俺の名前を知っているのか。

「なぜ? だって先輩は友だちだと思っていた人に裏切られたから」

 意味がわからなかったが、あの石像になってしまっている男子生徒がその友だちだというのは何となく察しがついた。

「裏切りられたって……ちょっとしたケンカなんだろ? 大げさじゃないのか」

「それが違うんです。お友だちさんは、先輩のことを好きになってしまったんです」

「……はい?」

 ますます意味がわからない。

「先輩は自分の容姿にコンプレックスを持っています……そのあまりの魅力に、これまで告白された回数は数知れず。相手は男ばかり。唯一友だちとして接してくれていたあの人もこの有様……悲しさと悔しさで先輩の気持ちはいっぱいになり、とうとう爆発してしまったのです」

 はぁ。

 事情はわかったが……

「お前は何してんの?」

「泣きじゃくる先輩も可愛いなと思って眺めてます」

「止めろよ!」

 何だこいつ!

 こいつも石像にされてしまえばいいのに!

「今俺たちが近寄ったところで、火に油ですよ。どうするかは任せますが」

「任せるなよ」

 ずっとニコニコしやがって。

 爽やかといえども不気味だ。

「それじゃあこのままだとあなたの出番はなさそうですね、アマリリスさん」

「あ? どういう……」

 意味だ。と、言いかけてあることに気がついた。

 泣いているやつの後ろに、誰かが立っていた。

 俺と同じように、ヒラヒラの衣装を身にまとった、男子が。

 衣装の色は鮮やかな青色だった。

「やめろっつーの」

 そしてそいつは、背後から涼白流菜の頭を叩いのだった。

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