第2幕 2話

 午後からの授業も適当に受け、放課後はさっさと帰ろうと校舎を出たときだった。

 突然、ポツッと頬に何かが降ってきた。

 雨か!?

 あんなに快晴だったのに、急すぎる雨だ。

 朝の予報では雨なんて一言も言っていなかった!

 洗濯も外に干しっぱなしだ。

 本降りになる前に急いで帰らなければ……

 と、走りだそうとしたが、雨は猶予など与えてくれるわけもなくドシャ降りになった。

 慌てて校舎へ引き返す。

 最悪だ……

 置き傘もしてないし……

 困ったな。

 傘を買おうにも、コンビニへ行く間にずぶ濡れになってしまう。

 アザミンとウッシーに助けを求めようか。

 それか、ナナ君に……

 あれこれと考えながらスマホを取り出したが。

 何だか様子がおかしいことに気がついた。

 雨の量が……多い。

 このくらいの大雨は珍しくとも何ともないが、水がどんどん地面にたまっていっているのだ。

 この勢いの雨で、こんなにたまるものか?

 どこかの川が決壊でもしたのだろうか。

 水が足首辺りまで来ている。

 これ……ヤバくないか。

 身の危険を感じた俺は、校舎の奥へと入り、階段を上がり始めた。

 それもまたおかしいと、気がつく。

 俺以外、誰も上を目指す者などいないのだ。

 よく見ると、生徒も教師も石のように固まっている。

 この現象、そして異常気象。

 まさかとは思うが……

 俺は屋上へと急いだ。

 たどり着いた頃にはもう、校舎は半分水で覆われていた。

 いつもの景色とは違い、かなりヤバそうな予感……

 一体どんなやつが……

「うわああぁぁぁぁんっ!」

 誰かが泣き叫ぶ声が響き渡った。

 何だ?

 と、キョロキョロすると、隣の校舎の屋上に人がいるのを見つけた。

 二人……いるが、一人は石像になっていた。

 それを前にして、何やら泣き叫ぶ人物がいる。

 男子にしては、やけに背が低いような気がした。

 何をしているんだ……?

 俺はフェンスに近寄って声をかけようとしたが、後ろから何かに引っ張られた。

「アマリリス! 大変だ!」

 アザミンとウッシーだった。

 いたのか!

 つか、いつの間にマスコットに!

「大変だって……その姿ってことは、これはやっぱり」

「そうだ。フラッシュフィッシュの仕業だ!」

「けど……肝心のやつらはどこに?」

「あそこで泣いているやつだ!」

 マジか。

 あれが?

「あれは、フラッシュフィッシュのトップに立つ五人のうちの五人目、涼白流菜すずしろるなだ!」

 ということは、三年……!

 強いやつきたか!

「それにしても……女子みたいな名前だな。男だよな?」

「女子と間違われることが多いようだが、男だぞ」

「……で、何で泣いてんだ?」

「それはわからない。でも、あいつを止めないとこのまま溺れてしまうぞ!」

 は?

 あいつが泣いているせいで洪水になってんのか?

 なんつー力だ!

 何でもありなのはもうつっこまないぞ!

「泣き止めばいいのか!?」

「要はそういうことだ」

 何とか説得して、まずは泣きやませるか……

 こうなったらもはや魔法少女とか関係ねぇな。

「簡単にいくと思っているでしょ。無駄ですよ」

 すると、俺の考えていることが筒抜けだったかのような台詞が聞こえてきた。

 振り向くと、爽やかに微笑む長身の男がそこにいた。

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