第2幕 1話

 気持ち良いくらいに、その日は晴れていた。

 こんな日の屋上は最高に気持ちがいいだろう。

 そう思いながら、いつも通り屋上へ向かった。

「ウィッス」

「やっほー。リーダー」

 不良二人はすでに来ており、購買のパンを頬張っていた。

「ナナ君さん、イケメンっすね」

 地べたに座るなり、アザミンにそう言われ、激しくむせた。

「な……何なんだ、いきなり!」

「いや……俺ら初めて会ったから……なぁ?」

「うんうん」

 つーか、そのナナ君さんってやめろよ……

 どっちかにしろよ。

「優しそうな人ですね」

「う……まぁ……」

 ナナ君のことを話題にされるのは非常に気まずい。

「そ、それよりさ……あの向坂郁ってやつのこと、何かわかったか?」

 俺は無理矢理話をそらした。

「あぁ……そういえば……」

 アザミンはスマホをいじりながら話し始めた。

「あいつが言った通り、向坂郁は教育系みたいっす。学年は二年」

「二年? 俺らと同じじゃねぇか。どこのクラスだ?」

「さぁ……それがまだわかんないんっすよねぇ……」

 あんな猫語男子、絶対目立つはずなのに。

「リーダーと組んでくれそうなやつは?」

「募集はかけているが、なかなか……」

 募集って何だ。

 どこでそんなものをかけているんだ。

「やっぱチームが出来上がっているとこばかりで、見つからねぇんだよな」

 アザミンはスマホの画面見て、難しい顔をする。

 本当、そのスマホで一体何がわかるっていうんだ。

 見せろよ。

「そういやさー、俺ら一位を目指してるわけでしょ? 今のトップって誰なの?」

 ウッシーが何気なく聞いたが、言われてみれば重要なことである。

 それは俺も知りたい。

「あー……そうだな……今の一位は……」

 ますます難しい顔になアザミン。

「フラワーズ・エンジェルだな……」

「……?」

 アザミンは当たり前のようにつぶやいたが、俺とウッシーにはさっぱりである。

 というか、何つった?

「昨年まで真ん中くらいで大して目立ってもいなかったが、今年、大きく体制が変わり一気にトップの座にまで登りつめた。今ややつらの勢いは誰にも止められない」

 いや、あの……

 いまいち何を言っているのかわからないんですけど……

 薊さん?

 俺とウッシーついていけてないの、気づいてる?

「しかし! 一位の座を狙うあるチームが、彗星のごとく現れた!」

 おい。

 何でしかもちょっと熱入ってんだよ。

「最強の二人組、その名もマジカル・ビューティー・フラワーズ!」

「ちょっと待ったぁ!」

 耐え切れなくなった俺は、棒読みでアザミンを止めた。

「何スか! これからなのに!」

「これからも何も、俺とウッシーはちんぷんかんぷんだっつーの! さっきから、何とかフラワーだの何を言っているんだ、お前は!」

 叱ったが、アザミンはなぜ俺が怒っているのかいまいちわかっていなさそうな表情をしていた。

「いや……だって。トップのチームを教えろって」

「……それでまさかとは思うが、そのチームとやらは、チーム名がいるのか?」

「もちろん……」

 そんな気はしていたが、やはりそうだったのか。

 エンジェルだのフラワー何とか言っているのは、全部魔法少女のチーム名ってわけか……

「チーム名ださいな!?」

 何で上位二チームともそんなネーミングセンス皆無な名前なわけ!?

 名付け親の顔が見たいわ。

「しかも、みんな俺らと同じ男子高校生だろ!? 何でそんな適当につけたアイドルグループみたいな名前なんだ!?」

「一応魔法少女だから、それっぽくファンシーにしようとした結果がこれなんじゃないですかね……」

 ……なるほど。

 それなら仕方ないな……

「俺らもいつかはこんなダサい名前を付けないといけないのか……」

「ダサくなくていいだろ、そこは」

 周りのやつらがダサいだけであって。

「それもまぁ、仲間が増えてからッスね」

「……そうだな」

 仲間……か。

 本当にそんなものできるのか。

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