第1幕 9話
俺たちの間に緊迫した空気が流れる。
しばしのにらみ合いの後、二人の敵が同時に動き出した。
二人いっぺんにとかずるいだろ!
「一人ずつって優しさはねぇのかよ!」
「俺たち悪役だぜ!? んなもんあるわけねぇだろ!」
ですよね!
「くそっ……!」
降り下ろされたバットと俺の構える剣が激しくぶつかり合う。
ぐっ……重い……っ
俺より身長も低いし、体重も軽いだろうに……っ
何だ、この力!
「アマリリス! 後ろ!」
アザミンの叫び声に、我に返る。
そうだ!あの忍者野郎!
目線を動かして、後ろを見る。
やつはまた俺の影から上半身を覗かせていた。
手には忍者の飛び道具、クナイ。
やっべぇ、殺される!
そう感じた俺は、反射的に後ろに身を引いた。
突然力を抜かれ、バランスを崩すバット野郎。
「おわっ……!?」
俺に向かって倒れてきたので、さっと横へとかわす。
すると……
「ぎゃーっ!」
ゴツン!
互いの額がぶつかり合い、鈍い音が響いた。
「いってぇぇぇぇぇっ!」
地面に転がり、痛みに悶える二人。
「ちっくしょー! やりやがったなー!」
「うるせぇ。いっぺんにくるからそうなるんだ」
それにしても痛そうだ。
すげぇ音したもんな。
「くそっ……何てやつだ! 極悪人! 鬼!」
「お前に言われたかねぇし……」
「月影! 反撃するぞ! ……って! おいぃぃ!」
忍者のほうは相当ダメージが大きかったのか、まだくたばったままだった。
「しっかりしろよ! このままだと、俺達の負けだぞ!?」
「もう……むり……あたまいたい……ねる……」
「え、ちょ、マジで言ってんの? お前1限からずっと寝てるくない? ねぇ、聞いてる? 聞けよぉぉぉさっちゃんんんん!」
「うるせぇぇぇ! さっちゃん言うな!! 頭痛いっつってんだろーが! デカい声出すんじゃねぇ!」
それだけ怒鳴って、パタリと忍者は倒れた。
何なんだ……こいつら……
「……今日はこの辺にしておいてやる! 次会ったときは絶対潰す! 覚えてろよ! 新入り! 俺は一年の
負け犬の遠吠えである。
双葉は倒れた相棒をおぶって、普通に扉から出て行った。
あっけない戦いだった……
とかいう以前にだな。
「お前らも新入りじゃねぇか!!」
俺は青空に向かってめいいっぱい叫んだ。
むしろ俺より新入りだよ。
学年的な意味で。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます