第1幕 7話

「えー、それではわかったことを発表します」

「……何を?」

 朝から濃い時間を過ごしてしまったので、昼休みが待ち遠しかった。

 しかし、いつものように弁当を食っていると、アザミンがスマホを片手にそんなことを言い出したのだった。

「魔法少女の目的は、悪の組織フラッシュフィッシュを倒すこと」

「……おう」

 それはもうわかってるんですけど。

「やつらの力は未知数。関係の無い人間を使って攻撃を仕掛けてくることもある」

 ……昨日のゾンビ化のような感じだろうか。

 俺はもう一度あの戦いを脳内で再生する。

「連中から人々の平和を守る……というのは表向きの理由で」

「表向き!?」

「実際はフラッシュフィッシュの連中と戦い、その戦績がランキング化され順位を競うのが目的です」

 理解するのに少し時間がかかった。

 そういや魔法少女は他にもいると言っていた。

 ……つまり。

「本当の敵は魔法少女……?」

「そういうことっスね」

 人々の平和なんぞより順位の方が大事というならば。

「他の魔法少女を潰せば、ランキングが上がるんじゃねぇのか?」

 ウッシーの言う通りである。

 というか、お前は説明役じゃないんだな。

「そう思わざるを得ないが、他の魔法少女を潰したところで大した得点にはならないらしい」

「でも仲間じゃないんだろ? むしろライバルなんだろ?」

「そうだな」

 ウッシーは納得いかない様子である。

 俺も納得いかない。

 ……正直どうでもいいけど。

「そもそもランキングだとか得点だとかは、一体どこの誰がつけているんだ」

「さあ?」

 俺の問いにアザミンは首をかしげた。

「その手の協会の人たちじゃないっスか」

「全然わかんねぇよ。その手ってどの手だ」

 説明が乱雑すぎる。

「ちなみにそれって一位になったら何かもらえんの? 賞金とか」

 ウッシーが更なる質問をする。

 確かに気になる事項だ。

「あぁ……一応年度の終わりに最終結果が出て、そこで一位になったチームには何かもらえるらしい……それが何なのかは不明」

 なぜ不明なんだ……

 本当にもらえるのかという疑念と、もう一つ。

 今、アザミンは気になることを言った。

「チームって?」

「あ。まだ言ってなかったっスね。魔法少女は最低二人一組のチームを組んでやっとランキングに載せてもらえるんっスよ。一人じゃいくら戦果をあげたところで無駄です」

「マジかよ」

 昨日のも何の意味のなさないというのか。

「俺たち三人で一チームってわけではなく?」

「俺とウッシーは、マスコットキャラなので戦えません」

「マジかよ……」

 だんだんと俺のテンションは下がっていく。

「要は……仲間を探せってことか?」

「そうっスね」

 俺は頭を抱える。

 非常に面倒くさい……

 そんでもって、「一緒に魔法少女になってくれませんか?」なんて言えるはずがない。 誰に言うんだ。

「なぜ俺がこんなことを……」

 不本意でしかない。

「まぁ……リーダーからすれば不満でしかないだろうけど……それでもやっぱ」

 アザミンの言葉に顔を上げる。

「どうせやるなら目指すは一位っしょ」

 俺は我に返った。

 嫌だと嘆いていても何も始まらない。

 俺はすでにこの戦いに身を投じてしまっているのだ。

 やるからには半端なことはしてはいけない。

 なぜなら、これは戦いだからだ。

「……そう……だな……」

 箸を握りしめ、俺は立ち上がる。

「お前ら……サポートは任せたぞ」

 二人は一瞬きょとんとした顔をしていたが、すぐに自信ありげな笑顔を見せた。

「もちろん!」

「全力を尽くすぜ!」

 こうして俺たちの戦いは今、始まったのだった――。


 ……って、やっぱり部活みたいじゃねぇか!

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