第1幕 4話

 そこからは、何が起きたのかわからなかった。

 二人が俺を凝視しているのは、わかった。

「花言葉は輝くばかりの美しさ! 正義と美しさでアナタを一撃必殺♪ フローラル・アマリリス参上っ☆ ―――長ぇっ!! って、違う! 何だ、今の!?」

 勝手に意味不明なことを口走ったぞ!?

「っ!!?? この格好……!?」

 さらに、制服を着ていたはずなのに、俺の服装はいつの間にか……日曜の朝の……女児向けアニメのような……ヒラヒラの……ピンクで……

「ぎゃああぁぁぁーっ!?」

 とりあえず自分の格好に悲鳴を上げた。

「リ……リーダー……」

「一体どうなっているんだ!?」

 二人ともオロオロしている。

「ふざけんなッ! 俺はそんな趣味ねぇぞ!」

「魔法少女なんだから、コスチュームは必須だろう」

「中途半端なことしやがって!!」

 ただの変態じゃねぇか!

 こんなの……こんなの……ナナ君に見られたら……

「戦え! アマリリス!」

「戦えるかぁーッ!!」

 死にたい。

 誰か俺を殺してくれ。

「が……頑張れ! リーダー!!」

「あんたならきっとやれる!」

「応援するな!」

 他人事だと思いやがって!

 くそっ……どうすりゃいいんだ!

「そうだ、お前たち。応援などしている場合ではないぞ」

「……え?」

「お前たちにも仕事がある」

「ええーっ!?」

 魔女は不良二人に向かって、手を伸ばした。

 犠牲になるのは俺だけじゃあないのか!

 と、少し喜んでしまったのだが……

「さァ、お前たち! アマリリスをサポートするんだ!」

「ぎゃーっ!?」

 二人は悲鳴と共に、ボンッ! と煙に包まれた。

 結構な煙だったので、俺はむせる。

 そんな煙も薄くなってきたところで。

 二人の姿が消えていたので、困惑した。

 どこに行ったんだ!?

「下を見ろ」

「下……?」

 魔女に言われて、目線を落とす。

「!?」

 そこにいたのは。

「何だったんだ、今の!?」

「うわーっ!? お、お前っ……!?」

「は? ……ええええぇぇっ!? どんしたんだ、お前!? うしおなのか!?」

「いやいや!そっちこそ!!」

 兎のような、よくわからない毛玉の生物が、お互いを見て驚いていた。

「魔法少女に付きものな、謎の生物! アマリリス、お前のサポートをしてくれる、アザミンとウッシーだ。」

「……ああ……」

 納得。

 にしても、あんまり可愛くねぇな。

「可愛くないけど……オイ、お前ら。ちょっとモフらせろ」

「!? リーダー目座ってません!?」

「アンタ、そんなキャラだっけ!?」

 二人……いや、二匹は俺から遠ざかって行く。

 チッ。

「ウッシーは相変わらず前髪が鬱陶しいな。」

「ウッシーって……潮だからウッシーなんですか、ソレ……」

 まんまだが、おそらくそういうことなのだろう。

 それを言うと、アザミンのほうが雑だ。

「これで役者はそろった! アマリリス、やつを倒すのだ!」

 魔女の言葉に、俺は再びグラウンドに目をやった。

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