第1幕 2話

「何だ……今の……雷か?」

「違うだろ……」

 二人は近くまで行って、グラウンドを見下ろしている。

 そんな二人をよそに、俺は周囲の異変に気がついた。

「これ……は……」

 夜……なのか?

 何も見えないとか、そういう暗さではない。

 何なんだ、この……風景は。

 子どもの落書きのような、そんな空間。

「お、おい!あれ!」

 金髪の方が声を上げ、指をさしている。

「うおっ!?せ……石化!?」

 俺も二人の傍まで行き、グラウンドを見下ろした。

 昼休みにグラウンドで遊んでいた生徒たちが……石になっている。

 俺は……夢でも見ているのか……?

「―――夢じゃあないさ。」

 聞き覚えのある声。

「テメェの仕業か!くそババァ!」

「リ、リーダ……?」

 突然叫び出した俺を、二人は不思議そうに見た。

 俺たちの後ろにはあいつがいた。

「№6……そんな言葉遣いを教えた覚え、私にはないよ。」

「うるせぇ!」

 魔女はいつも座っている椅子と共にいた。

 何で椅子ごと現れるんだ。

「一体何の真似だ、№5。てめぇらが何をしようと勝手だが……俺を巻き込むな!」

 二人がポカンとしているのも忘れ、俺は魔女をにらみつける。

「私じゃあないさ。」

「はぁ!?こんなこと、他に誰がッ……」

「だから、何度も言っているだろう。お前が次の魔法少女だ。」

 説明になっていない……

 が。

 不本意ながら何のことかわかってしまった。

「この世界は今!ある脅威に晒されている!」

 一人で勝手に盛り上がりだす。

「世界を滅ばさんとする悪の組織、その名もフラッシュフィッシュ!」

「フラッシュ……フィッシュ……?」

 俺たちはざわついた。

「フラッシュフィッシュ……噛みそうだな……」

「魚?」

「つーか名前ださくね?」

 思ったことをそれぞれ口にしていると、魔女が大きな咳払いを一つした。

「さぁ、戦え!新たなる魔法少女よ!人類はやつらの手によって、ダメ人間にされてしまう!」

「……ダメ人間?」

どういうことだ、ダメ人間って。

 本当に意味がわからない。

 何でそれで世界が滅びるんだよ。

「人間がダメになってしまえば、世の中上手く機能しなくなるから最終的には滅ぶ……ってことじゃないですか?」

 金髪が俺にコソッと耳打ちした。

 んなことで滅んでたまるかよ。

「―――だったら試してみろよ。」

 どこからか、そんな声が聞こえてきた。

「あ!あそこ!」

前髪が指さす。

そこにはベンチがあり、その上に人が寝そべっていた。

「何もせず、そこで見ていればいいさ。世界が滅んでいく様子を。」


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