第10話 エリック将軍
俺は思わず固まった。
エリック将軍。
王国大一軍の将軍にして王弟。
王弟故に将軍と言ってもお飾りだ。
そもそも陛下には弟が五人いた。
現在の生き残りはエリックだけ。
王位継承時に全員死亡した。
と言うか……親父が全員抹殺した。
と、言われている。
もちろん表向きは病死や事故死。
実際は現在の俺のように毒を盛られたのだろう。
まさに鬼畜の如き所業だ。
もちろん証拠もなければ証人も少ないので真実は闇の中だ。
まあステキ!
さてエリックを紹介しよう。
エリックの派閥は正妃派。
と言ってもそれを表には出していない。
あくまで王弟だから伝統を重んじると思われているだけだ。
腹の中では何を考えているかわからない。
親父の身内はそんなのばかりだ。
こうやってなじっているところからもわかるとおり、俺は心の底からエリックに護衛されるのが嫌だった。
俺にはエリックに護衛をして欲しくない理由があった。
それは簡単な理由だ。
俺が死んだら一番得をするのはエリックだ。
王と俺と弟の三人を排除すれば王になるのはエリックだ。
いや殺すのは托卵された雛である俺だけでいい。
王には毒でも盛って動けなくして、正当な血筋であるランスロットを
だが俺の存在だけは許せないだろう。
なのでいらない子は闇に葬る……
俺は自分の想像力の最低っぷりに反吐を吐きそうになる。
もっと家族を信じようぜ!
俺の叔父貴だろ?
……無理。
だってあやしいもん。
密かに葛藤する俺が固まっているとドアがこんこんっとノックされた。
嫌な予感がする。
「レオン。エリックが来ましたよ」
シェリルが最悪の事態を予告するとメイドがドアを開け男が入って来た。
外見は映画俳優のような美中年。
「お、叔父上……」
「レオン殿、このエリックが来たからもう安心ですぞ」
中身は体育会系ゴリラ。
俺は思わず『たけしの挑戦状』のゲームオーバー画面を思い出した。
あの葬式のやつ。俺も実物をプレイしたことはないけどね。
タワーマンション型死亡フラグ内覧会のお知らせ。
高層階は王子様の死でございます。
「さあ王子の護衛を紹介しましょう。入ってこい」
そう言うと若い男が二人入ってきた。
俺はどうしても値踏みするかのように彼らを注意深く観察してしまう。
一人は刈り込んだ短い黒髪にぼっこりとした僧帽筋、筋肉質の大男だ。
大きい体のわりにその目は知性を宿している。
耳が肉で潰れている。
ぎょうざ耳というやつだ。
レスリングや柔道みたいな組技の使い手は頭や体が耳に激突することで腫れ上がり次第にああいう耳になる。
指も何本か指が曲がっている。
襟をつかもうとして脱臼したり骨折したりしたせいだ。
もしくは折られたか。
指関節を曲げるってのは実戦的だからな。
ということは、バリバリの戦闘員だが、ただの脳筋じゃなくてありとあらゆる戦闘法を身につけたクレバーな戦士だろう。
もう一人は茶色い髪の明るそうな男だ。
中肉中背、顔も普通、明るそうという以外に特に特徴はない。
どこにでもいる普通の兄ちゃんという印象だ。
デカい方の兄ちゃんと比べたら書くことは少ない。
ただ、まぶたの上にうっすらと切った跡があるのが気になる。
「ベンとライリーです。二人とも若輩ですが優秀な士官ですぞ」
叔父貴がオーバーアクションで俺に二人を紹介した。
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