第二部『得度戦争』

ここより第二部「プレイバック・ブッシャリオン」

カタカタカタカタ……


『※この物語はフィクションです。実在の人物・聖人・宗教団体ならびにその教義などとは関係ありません。』


▲『黄昏のブッシャリオン』▲総集編


『今よりも遥かな未来。けれど浄土は更に遠く、滅びは遥かに近い黄昏の時代。

徳に溢れた楽園は潰え、地には人類を救済せんとする無人機械が蠢く末法の世。

それが、この物語の舞台だ。

 旧・ニホン国。旧・タティカワ実験都市。

 嘗ての未来都市の青写真は、今や徳を棄て生きる者達が集まる吹き溜まり。ここから、第一の物語は始まる。

 ガンジーとクーカイ。二人の採掘屋。嘗ての文明の遺物を漁り、墓を暴くことを生業とする者達。旧文明の遺産なくして、今の人類は生き延びられない。

 徳エネルギー文明は、世界を変えた。善行をエネルギーに変える技術は、僅か百年足らずで世界を徳の高い理想郷へと作り変えた。

 しかし、全人類が徳を積み始めた結果、その理想郷はパンクした。徳カリプス。徳エネルギーの暴走によって、人口の7割が成仏してしまい、文明は崩壊した。

それでも、人類は徳エネルギーを捨てることができなかった。

 徳カリプスより十四年。今や、街に残された僅かな蜘蛛の糸すら無慈悲に絶たれた。街を生き延びさせるため、新たな徳エネルギーを求め、ガンジーとクーカイは荒野へ旅立つこととなる。

 ……だが、徳無き荒野は決して平坦な道のりではない。

 得度兵器。全人類を出家(得度)させ、解脱へ導くことを絶対命令として刻み込まれた自律機械群。徳無き荒野に蠢く、アフター徳カリプス世界の地上の覇者。人類救済のため、その姿すらも偶像へと近づけた巨大兵器。

 徳エネルギーによって稼働する彼等は、自らのエネルギー源としても人類を必要とする。

 荒野を乗り越え、ガンジーとクーカイが至ったのは徳に溢れた街であった。

 文明が崩壊して尚、徳カリプス以前の暮らしを続ける人々。しかしそこは、街そのものが得度兵器のエネルギープラントだったのだ。

 紆余曲折の末、街の信仰を集める得度兵器と交戦。辛うじて破壊するガンジーとクーカイ。

 だが、得度兵器の発信した救難信号を受信し、更に三体増援が現れる。しかし、救難信号を聞き届けたのは得度兵器だけではなかった。

 嘗ての徳エネルギー社会の影たる、肉体に徳遺物を埋め込んだ改造人間。舎利ボーグ。ノイラを名乗る舎利ボーグの女は、またたく間に三体の得度兵器を破壊した。

 得度兵器から徳エネルギーのジェネレータを回収し、ノイラと街の娘……ガラシャを仲間に加えて帰路につくガンジー達。ひとまずの安寧を取り戻した彼等の心には、微かな希望が宿りはじめる。

 だがその頃、遥か南極では一つの転機が訪れていた。

 徳エネルギーブッシャリオンの始まりとなった、覚者の痕跡。無限の徳を放ち続ける徳遺物、仏舎利。

 そして、得度兵器に手を貸す、嘗ての徳エネルギー研究の権威。半身を機械化し、己の徳の力のみで生き続ける怪物、田中ブッダ。

 この2つが出会う時、大いなる仏舎利争奪戦の幕は上がる』

 フィルムが、止まる。

「これは、徳に背を向け、救いを擲ち、それでもみっともなく足掻き続ける者達の物語だ。僕は、そう言った」

 青年は言葉を紡ぐ。

 この先に続くのは、徳に身を捧げ、救いを求める者達の物語。

「だからこれは、『彼等』の物語ではない」

 だがそれでも、人は救いを求め続ける。

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