第3話
『――いたか!?』
『いや、こっちには誰も!』
『こっちも見当たらなかった!』
『くっそう、どこへ隠れやがったんだ
そんな声を頭の向こうに聞きながら……身を低く沈めて、俺は刈り込まれた垣根の影に隠れるようにして、そろそろと
ある場所――それは、裏庭。
ヤツらに追いかけられているうちに、どうやら別の部にも部費upの話が伝わってしまったようで、それこそこの時間まで残っていた全校生徒から追われるようなハメとなってしまった俺は。
もちろん、そのまま校外へと脱出しようとした。
まさか校外へまで追っては来れまい。――と考えた俺の思考など、とっくに生徒会からは読まれていたらしく。
唯一の脱出口である正門と裏門には、ガッチリ生徒会の手配した人員――おそらく生徒会執行部の面々か風紀委員会かと思われる――がスタンバイ済みであり、『ここは通しません! 呼び出しがあった通り、生徒会室へお連れします!』と、やはり俺を捕まえにかかってきたのだ。
正門と裏門でご丁寧に二度もそれに遭遇してしまい、しかしそこを何とか回避し、逃げて逃げて逃げまくって、隠れる場所を見つけては隠れまくり……、
こうして何とか追っ手を撒くことに成功した。
そして何とか裏庭へと至る道のりを、亀の歩みながらも、順調に突き進んでいる。
なぜ裏庭を目指しているのか、といえば。――そこにしか“道”が無いからだ。
正門と裏門を塞がれた今、校外へ脱出するには非正規のルートを使うしか手段は無い。
校内を見渡せば、塀を乗り越えるなりして脱出できる道は他に多々あるものの、しかし思い当たる場所は、どこも人目に付いてしまう場所である。おそらく確実に、生徒会やらどこぞの部が、その脱出ポイントも押さえているに違いない。そんな危ない橋は、とてもじゃないけど渡れない。
裏庭と一般道路を区切っているのは、到底よじ登ったり出来そうのない背の高い青々とした緑豊かな垣根ではあるが、そこに一箇所だけ、無理すれば人一人が通れるくらいの隙間があるのだ。
きっと知っている人間は僅かしか居ないだろう。
俺だって、登校時の近道として発掘していなければ、絶対に知らずにいた。
まさか、人の背よりも高い垣根を越えて脱出できるだろうなんて、誰も思いもしないだろうしな。
――甘いゼ、活路ってのは乗り越えられない場所にこそ切り拓けるモンなんだヨ。
ほぼ知られていないだろうココを除いて、もう他に道は無い。
ようやく裏庭の、もう誰の声も聞こえない場所に到達して、ホッと安堵の息を洩らしつつ俺は立ち上がった。もちろん、念には念を入れて、誰の目にも届かぬよう、ぬかりなく木の陰に隠れながら。
案の定、立ち上がっても、それを見咎める声は飛んでこない。
しめしめ…と、当の垣根の隙間を目指して歩き出した、――それと同時に。
「悪いけど……アタシ、追い詰められた人間の取る行動なら比較的よくわかっちゃう方なのよね」
ものすごく近くから声がした。
ハッとして振り返れば、さきほどまで俺が居た場所の死角に当たる、植え込みの影に立っている人影。
「――あ…
「だから君なら、逃げ道を塞がれたらココに来るだろうと思ってた」
そしておもむろに手を伸ばす。
俺と有澤先輩の距離は、そうやって手を伸ばせば届いてしまうだけの距離でしかなくて。
そのまま先輩の手により、俺の手首がグッと握り込まれる。
そして同時に、――カシャンと、何か聞き慣れない音が響いた。
軽く手首へとぶつかってきた、何かよくわからない衝撃。
「え……?」
見ると、俺の手首には、銀色の輪っかのようなもの、が、嵌められて……、
(――って、これ手錠っ……!?)
よく刑事ドラマで見かける、おまけにちゃんと鍵穴も付いてる、ある程度の重みもあり、オモチャにしては良く出来てる、紛うことなき手錠―――。
認識すると同時、バッと有澤先輩を振り仰ぐ。
俺にそれを嵌めてくれやがった張本人である先輩は、なのに普段と変わらず涼しげなカオで、にっこりと微笑んでみせた。
「――チェックメイト!」
そして、空いていたもう片方の輪っかを、何の躊躇もなく、そのままカシャンと、軽く自分の手首に嵌めてみせる。
「ん、なっ……!!?」
言葉も出せずに絶句した俺を覗き込むように見つめ、とっても楽しそ~うな様子で、先輩はそれを告げた。
「コレを外す鍵、一体どこに在ると思う?」
「――――!!」
その答えは……もはや聞くまでも無いだろう―――。
*
あの目立って美形ぞろいで見た目に華やかな…でもアクの強すぎる、そんな〈会長〉や〈副会長〉や〈会計〉に隠れて。
〈書記〉――つまり
確かに、一般の高校生相応に、可愛らしい人ではあるけれども。他の三人のように“美形”と云われるホド特徴のある派手顔ではないし、成績がズバ抜けて良いとか運動神経が飛び抜けて抜群だとかいう話も聞かないし。とりたてて目立った何かを為すようなタイプの人ではないのかもしれない。
そういう表面的な意味では、良くも悪くも、皆の言う通り、“普通”でしか無い人なんだろう。
口さがない者は、平気で彼女のことを“人数あわせの役員”などと陰口を叩く。
『あんな目立つ連中が、今サラ平凡な一般人なんてマトモに相手にするワケないじゃん』
『てか、つまり役員のパシリなんでしょ』
『よっぽど使いやすいんだろうね、ああやって仲間に入れてやってるってことは』
普段から余計な口数が少ない先輩の、一見したら大人しげな風情が、そういう陰口に信憑性を与えているのかもしれない。
――でも、俺は知っている。
実のところ、生徒会役員の中で一番“常識”という名のタガが外れているのが、この人、だったりするっていうこと―――。
後から聞いたことだが、あの“俺を捕まえて生徒会に差し出したら部費up”なんてゆー根も葉もない噂が流れたのは、有澤先輩の仕業だったらしい。
そんなのマトモに考えたら絶対に有り得ないことではあるが、それに信憑性を与えるよう、彼女の指示で執行部員がサリゲナク裏工作をして回っていたのだとか。
そうやって、自分は動くこと無しに、残っている生徒を総動員させて俺を捕まえてこさせるように取り計らった、と。
また、そのような俺の捕獲作戦のために動いていたことについても、生徒会の意図したところではなく、まるきり彼女の独断ということだった。
だって、手錠で繋がれて生徒会室へ連行されてきた俺を見て、真っ先に
「『ちょっと行ってくる』って行ったまま何をしてるのかと思えば……さすが美晴。どんな方法を使ったのよ」
そんな梨田先輩に向かい、「コレだよん」と、見せ付けるように有澤先輩が腕を上げる。――もちろん、手錠で繋がれた俺の腕ごと。
「なっ…!? ――なによそれ!! そんなもの、どこで用意してきたの!?」
それを目にした途端、梨田先輩が更に目を瞠っては驚きの声を上げる。
梨田先輩が知らなかったんなら……なんだ、これ生徒会の備品じゃなかったのか。――って、それはアタリマエだ。こんなん備品にする意味も無いだろ。
じゃあ一体どこから…? と、俺も訝しく思って有澤先輩を振り返ると。
なんら普段と変わらない普通~の表情で、あっけらかんと彼女は、それを言ってのける。
「ああコレ? もちろん
「――って、おいコラ、ちょっと待てぃッッ!!」
そこで即座に部屋の奥から武田先輩のツッコミが飛んでくる。
――てゆーか……今『私物』って言ったか? 『私物』って……?
「なにに使うのよ、そんな『私物』……」
聞くなりめちゃくちゃ白い目を向けてそれをツッコんだ梨田先輩の反応が……ヒトとして最も正常な反応だと、俺も思う。ものすごく思う。
だって、考えてもみろよ、手錠だぞ手錠? 一般高校生が一体何の用があるっていうんだよ手錠に?
「だから誤解だろ、誤解!! こら美晴、おまえ何て事実無根なハナシを……!!」
「『事実無根』じゃーないでしょー? だってコレ、
「あさるなよ、仮にも先輩のロッカーをっっ!!」
――うん、確かにあさるなヨ……てか、『坂本先輩のロッカー』に、手錠……?
「だって、こういう時くらいしか先輩たちのロッカーの中身なんて使い道ないじゃない。あんなガラクタだらけのホトンドおもちゃ箱ロッカー」
「だからってオマエなあっっ……!!」
この先輩がたの言う『坂本先輩』とは、極めて有能で敏腕だった、前期生徒会会長サマ。
役員を引退した現在は執行部員として生徒会にもまだ籍を置いているが、と同時に、俺と同じ天文部員でもある。
だから……うん、俺のよく知るあの坂本先輩だったらば、ロッカーに何を隠し持っていたとしても納得できてしまうかもしれないけどね……。
「だから、なんで先輩のロッカーに手錠なんか入ってるのよ……」
呆然としたように、はたまた呆れ返ったかのように、タメ息まじりで梨田先輩がそれを呟いた。――ちなみに坂本先輩は、ナニゲに誰にも知られていないけど実は、梨田先輩の“彼氏”、だったりもする。…らしいよ
「だから、先輩のロッカーに入ってるモノ
「なんでだよ!! 別に、俺は坂本先輩のロッカーに入ってるモノには一切関与してねーしっっ!!」
「嘘つけよ。じゃあ何でアンタのロッカーには物々交換した先輩たちの私物が入ってるんですかねー?」
「い゛っっ!? ――そ…そそそそそ、それも誤解だっ!」
「だったらヒトの目を見てシッカリ言えよ」
「てゆーか、なんでオマエが俺のロッカーの中身まで知ってるんだよっっ!! そもそも鍵だってかけてあっただろうが!!」
「暗証番号は誕生日など他人に知られやすい番号にするのはヤメマショウ」
「…………!!」
「ま、いいじゃん、非常事態だったんだし。気にするなよ」
「気にするよっっ!!」
「とにかく、つべこべ言わずにサッサと鍵出せ!」
――強すぎるってばよ、だから。
この時、俺の中で有澤先輩の“生徒会最強伝説”が確定したことは、言うまでもない。
そういえば以前、三樹本先輩が言ってたっけ。――『美晴は、放っとくと何やらかすか分からんから面白い』、って。
…つまり、こういうことなのか。
人間、見た目ってアテにならないもんだよな。全く。
ああチクショウ…! と、ガックリ肩を落とした武田先輩が、追い討ちでもかけられるように「ほらほら早く早くっ」と有澤先輩にせっつかれて、ようやく鍵をどこからか取り出してきてくれ、そうしてやっと繋がれたままだった手錠が開錠され……ようとしたものの。
「――もとはといえば早乙女ぇ……!! オマエが無駄な抵抗しないで素直に呼び出されてくりゃあ、こんなことにはならなかったんだよっっ……!!」
鍵が鍵穴に差し込まれようとした、まさにその直前。
その言葉と共に、思い出したように襟首を締め上げられる。――って、今度は俺にトバッチリかよ! ヒトが繋がれてるのをいいことに!
「たっだいまぁ~ん♪」
その時、そんな声と共に出入口のドアが引き開けられて、不在だった
「ちゃーんと後始末してきたよー……―――?」
言いかけた言葉が、不自然に途切れる。
その視線の先は、いまだ手錠で繋がれたままの俺と有澤先輩の手首。
――な、なんか会長、誤解してる……?
「あ、いや、会長、これはですねっっ……!!」
「――ああ
慌てて弁解しようと口を開いた俺の言葉が、その有澤先輩のセリフに遮られた。
「
「ラジャラジャー、かしこまりーっ★」
――ちょっと待て……? 今のやりとりは、一体……?
「ひょっとして由良、これが坂本先輩のだって、知ってたの……?」
梨田先輩の恐る恐る…といった体での問いにも、屈託も無く「うんっ」と返してから。
「『坂本先輩の』…っていうか、テルくんのでしょ、これ?」
――そのニッコリ笑顔を向けられて……途端、俺を締めていた『テルくん』こと武田先輩の身体が、パッキリと硬直した。
生徒会副会長・
「い…いやだなあ、由良。ボボボボクがそんなもの持ってるハズ……!」
「やぁだあ、別に由良、テルりんがそんなもの持ってたからって、こういうプレイが好きな年上のカノジョさんと楽しくやってるんだろうな~とかなんてこと、カケラも思ってたりしないから安心してっ★」
「…………ッッ!!」
武田先輩、これで撃沈。――かと思いきや。
ガックリと落としていた頭をおもむろにガバッと上げるや否や、そのまま会長の両手を取った。
「違うんだ由良! 本当は、こうやって君と一つ手錠で繋がれる日を夢みて、ボクは断腸の想いでコレを手に入れ……!!」
「あははははーっ★ 楽しい冗談だね、テルるんっ♪」
――即座に笑顔で振りほどかれてるけど手……。
「まったく、いつもながら全然相手にされないでやんの」
いつの間に武田先輩から取り上げていたのか、鍵で手錠を開けてくれながら、有澤先輩が「懲りないバカよねーホント」と全く興味も関心も無さそうなカオと声音で、それを呟く。――きっとココでは、こんなのも今さら騒ぐホドでもない日常茶番劇に違いない。
「どいつもこいつも……」
そうやって繰り広げられている寸劇を横目に、梨田先輩がおもむろに、はーっと深々としたタメ息を吐いた。
「―――腐ってるわ」
…ええ、本当に、全くもって、その通りで。
後々になってから、その手錠は、手品用の小道具だったということが判明したのだが。
それからしばらくの間、俺が先輩たちへそういう目を向けてしまうようになったことは……まあ、いたしかたないことだといえるだろう。
ちなみに、武田先輩がナゼそんな小道具を持ち込んでいたのか、そしてナゼ坂本先輩がそれを頼んだのか、その理由については未だ明らかにされていないままである―――。
*
「――じゃあ、改めて本題に入るけど」
そう口火を切ったのは梨田先輩だった。
吉原先輩が定位置――『生徒会長』と書かれた三角札が載せられた机――に着いたのを皮切りにして。
…とはいえ、机に向かって椅子に座ったんじゃなく、机にチョコンと飛び乗って腰かけただけなんだけど。
俺は、ほぼ無理矢理のように、そんな会長の真正面に座らされていた。わざわざ椅子まで用意されて。
そうして向かい合う俺たち二人を囲むようにして、他の役員三名は、思い思いの姿勢で…でも一様にコチラを見下ろすように、立つ。
「大体の
「あ、その、それは……」
そう改まって淡々と、しかも冷静に、問い質されてしまうと――しかも相手が梨田先輩だ、こちらが落ち着かなくなってしまう。
「違うんですか……?」
言外に“違わないでしょう?”というニュアンスを含み、恐る恐る先輩を見上げると。
呆れたように俺を見下ろし返して、そして「あのね、早乙女くん…」と、深々としたタメ息を吐いた。
「なにも生徒会に籍を置いてるのは武田だけじゃないのよ。幾らこの馬鹿がそんなこと言い出したとしたって、まず私たちが簡単に通すハズもないじゃない」
そこで横から「誰が『馬鹿』だよ、誰が!」と武田先輩のツッコミが入るも……それはアッサリと黙殺される。さも当然とばかりに。
「それに私たちが“手近なところ”で済ませようと思ったら、天文部じゃなくて、まず執行部から当たるわ。――そうじゃない?」
「…………」
言われてみたら“その通り”だ。
〈生徒会執行部〉とは、生徒会組織の頂点に立つ〈統括本部〉の、いわば“秘書”的なポジションを任されている生徒団体である。
つまるところ生徒会幹部役員連中の手下だよな。言い方は悪いが。
だから役員と違って、ここは通常の部活動と同様、希望者なら誰でも所属可能である。選挙で選ばれなければならない必要もないし、資格も要らなければ、人数制限も――それは本部役員の独断によって決められるため――無いに等しい。
ようするに、ココに属しているからには、理由にこそ長短差はあれ、大概は生徒会の仕事に関わりたい連中であることがハッキリしてるワケである。
加えて、もう既に生徒会本部の仕事を手伝っているのだ、改めて仕事内容を教え込まなきゃならない必要もないしな。引き継ぎの手間も省ける、ってなモンだろうし。
確かに順当に考えれば、次期生徒会役員は執行部員の中から指名するのが、最も“手近”で、なおかつ“手軽”に、済ませられるだろうと、俺も思う。
ひょっとしたら、次期役員になることを狙って執行部に所属してる人間だって居るかもしれないしな。なにせウチの学校の場合、生徒会長および本部役員は“指名制”で引き継がれていくワケだから。なるべくなら常日頃から会長の近くに居た方が、指名もされ易いというものだろう。
しかし、それならば……、
「――じゃあ、どうして俺なんかに声なんて掛けてくるんですか」
それに尽きる。
梨田先輩が言外に“あんたなんか必要ないのよ”と言わんばかりの、生徒会とは全く縁もゆかりも無い、この俺に。
どうして吉原会長が『次期生徒会長に推薦します』なんて言ってくる必要があるというのか。
「だから、最後まで話を聞きなさいって言ってるのよ」
多少イラッときたらしい口調になって、そんな返答が返ってくる。
「こっちの話もロクに聞かないで、一人で勝手に早合点するから! だから、こんな面倒な事態になったんじゃないの!」
「う、はい……スミマセン……」
――やはり何を言われるのでも、梨田先輩の言葉は必要以上の重みがある……というか、平たく言うなら、ただ単にヒタスラ怖い。
「まあいいじゃん。もうそのくらいにしといてやんなよ」
そこで有澤先輩が、そう苦笑まじりに諫めてくれなかったら、俺は縮こませた首を最後まで元に戻すことが出来なかったに違いない。
「とっとと結論から言っちゃった由良の切り出し方にも、多少は誤解を招くモノがあったんだろうしね」
――うん、それはある。多大にある。
心の中だけで大きく頷いた俺を見通したように、タイミングよく「ごめんねえ、スバルちゃん★」と、殊更に申し訳なさげな表情でもって、目の前で会長が微笑んだ。
「今度はちゃんと、スバルちゃん指名したイキサツから話すから。――だから、ちょっと待ってね。もうそろそろ戻ってくると思うのよ」
「は……? 『戻ってくる』、って……」
―― 一体、何が……?
それを尋ねようとした俺の言葉と、ふいに聞こえてきた扉をノックする音が、重なった。
続いて聞こえてきた扉が開かれる音に、俺を含み、部屋の中の人間の視線が一斉にそちらへと向かう。
「…お取り込みの最中、申し訳ありません」
扉を開けた瞬間、目にした室内の雰囲気で即座に“取り込み中”と覚ったのか。
咄嗟に軽く目を瞠ると、まずそんな詫びの言葉から口にし、そして会釈した。
顔を上げたソイツと、振り返った俺の、視線が合わさる。
そこで、あっと気が付いた。
戸口に立っていたソイツは、俺も顔だけは見知っていたヤツだったから。
確か隣のクラスの名物双子の片割れ―――、
「ナイスタイミングだね、
その声で、ハッと我に返り、俺は会長を振り返った。
「紹介するわ、スバルちゃん」
戸口に立つソイツを手で示しながら、相変わらずのにこにこ笑顔で、俺に向かい、それを告げる。
「彼は、執行部員の
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