《第10話》
大切なもの(1)
「ちょっ!? どういうこと??」
屋敷本宅の一階は今、相当にざわめいていた。
今朝もいつもの様に
未だレディーズ・メイドとしての地位にあったエレノアも、この状況を掴めず、困惑顔を見せている。そんな各メイド達の前を澄まし顔に堂々とメルは歩いてゆき、列の一番後ろへ他のメイド達と同様に並んだ。これには各々、思い思いに囁き合い、場は益々ざわめき立つ。エレノアとしてもこれにはただただ困り、瞳を泳がせてしまう。
そのような中へ、屋敷管理人であるスコッティオが階段を降りて来て現れた。
「今朝はまた随分と騒がしい様子ですねぇ……おや? そこに居るのは、メルかい?」
スコッティオもまた、そこでメルの存在に気付き、驚いた表情を一旦見せ。間もなく困り顔に変えていた。するとメルは、真剣な表情をして一歩だけ前へと進み出て、それからスコッティオの方を向きスタスタと近くまで行くと、決意に満ちた表情で口を開いた。
「先ずは、スコッティオ様の許しも無く、勝手にこちらへ来たことについて、深くお詫び致します。
申し訳ありません!」
「え? ああ、そうだね。後でそれなりの罰を考える必要があるかねぇ……?」
「はい。それについては、遠慮無く! ですがその前に、少々順番が前後してしまいましたが。スコッティオ様、ほんの少しだけお時間を取らせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「え? えぇ……」
スコッティオは事情を理解出来ないままにメルの勢いに押され、つい……頷く。メルはそれを確認するなり、空かさずエレノアの前にまで歩いてゆきスッと見上げ、そのままその場にて膝を崩し、まるで神を崇め祈るかの様にして言った。
「ごめんなさい……エレノアさん。今はわたし、本当に反省しているのです。
わたしにとってあのお菓子は……シャリルとわたしの友情の証みたいなとても大切なモノだったから、ついあの時は『カチン☆』ときて怒ってしまったけれど……。だけどそれで、エレノアさんの心をキズ付けても良い、ってことにはならないものね?
それはそれで許されないことだったと、わたしは思うの。
それなのにわたし、凄くエレノアさんに当たって『絶対に許せない!』って思ってしまった。本当のことを言うと……許せない、って感じている自分がまだほんの少しだけ残ってるんだけど……。
でもね、今は少しだけそんな気持ちも落ち着いて考えられる様になったの。それでね……わたし、こう決めたんです。
あの時は本当にごめんなさい! あんな些細なことで、エレノアさんの心を深く傷つけてしまって……今はそのことについて同じくらい深く反省しています……今朝はそのことをどうしても伝えたくて、失礼を承知で来たんです!
これでどうか、このわたくしめを許しては頂けないでしょうか? エレノアさん……」
メルはそう言い切り、静かに祈る様に両目を閉じ俯いた。
あとはこれで、エレノアがメルのことを許してくれるかどうかだった。
辺りは驚くほど静まり返る。
しかしこの茶番を、唯一、前日からメル本人に聞かされ知っていたJCからしてみれば、メルの仕草も台詞もかなり芝居がかっていて、思わず呆れ顔を見せてしまう有り様だった。
でもそんな事情など知らないエレノアや他のメイド達からしてみれば、メルの行動と勇気ある思い切った言葉には、感心してしまう子も多く居て。あのベッティー達三人組の中でも、アビーは特に、そんなメルの様子に感銘を受け突如として泣き出し膝を崩し、
「ごめんなさい! ごめんなさい! メル……それにエレノアさん。わたし達があの時は勇気がなくて、一番悪かったの! ごめんなさい!!」と急に謝り始める始末だった。
これにはベッティーとリップリの二人も参った。
でも……周りからの強い視線を感じ……残り二人もエレノアとメルの傍へと行き膝を落とし、
「ごめんなさい……私も悪かったと思っています」
「あ、あの……今更かも知れないけど、私も反省してます」
と次々に謝り始める始末。
そんな中、スコッティオもJCと同様にメルの芝居がかった行動を見抜き呆れ顔を見せていたが。だからと言って、今のメルが言った言葉には嘘が無いのも本当だろうと理解し、この結果にはそれなりに満足する。
あとは……エレノア次第だった。
周りのメイド達が注視する中、エレノアは長い沈黙を保ったままだった。でもその瞳はよく見ると、動揺しているのが覗えるくらいにこれまでのエレノアらしくもない落ち着きの欠けた様子だった。スコッティオは他のメイド達とはまた違った角度から、そんなエレノアの様子を覗い見つめる。
――と、突如に。そのエレノアの瞳から涙が溢れ、止まること無く零れ始めていた。
と同時に、エレノアはその顔を直ぐに両手で覆い隠す。それはまるで、自分の中の何かを隠すかの様に……。
メルはそれまでずっと、瞳を閉じたままエレノアからの許しを待ち続けていた。でもその瞬間だけ、それまでとは何か違った気配を感じ、メルはその瞳を開け、目の前に立つエレノアを見上げる。
エレノアは間もなくメルと同じように膝を崩し、今のメルとそんなに変わらない視線の先で顔を両手で覆ったままその口を開いた。
「メル……違うの…本当に謝らなければならなかったのは、私の方だった……なのに私……わたし…」
「……」
メルには、エレノアがどの件についてそう言ってるのか、直ぐに察した。
それはきっと、シャリルがくれたお菓子を食べてしまったことについてなのだと。『誤解があった』などと色々聞かされていたけれど、やはり思った通り、それらは全部エレノアが撒いた嘘だったんだ!
メルはそう思い、そんなエレノアを軽蔑めいた表情で見つめ、口を開いた。
「別にそのことについては今更、謝って頂かなくても結構です! 最初っから、わかっていたことだったしね……もう気にしていませんから! 本当に、まったく!!」
ツン!としてそう言い放つメルを見つめ、ベッティー達三人組は慌てて口を開いた。
「だからそれは、誤解なんだってば!」
「そうだよ、メル! エレノアはまだ、一口も食べてなかったんだぞっ!」
「今回の件については全て、わたし達三人が悪かったの……だからメル、エレノアのことはお願いだから許してあげて……」
最後に泣きながら言ったアビーの言葉に、ベッティーとリップリは顔を見合わせ驚いていたが。結局のところ……本当のことなので言い返せず、ここは困り顔にも黙っているしかなかった。
でもメルはこの件についてまだ納得していなかった。
この件というのは、エレノアがお菓子を食べたか食べなかったかについてだ。というのも、メルはそのお菓子をエレノアがまさに口に運ぼうとしていたのを目撃していたし、そもそもこのアビーを含むベッティー達三人のことを信用してなかったからだ。
今回の件はこのまま収束するかに一度は思われていたが、思わぬエレノアの告白から一転。事態はこじれ始めるかに思われた。
――が、
「――もういいの! もういいのよ……三人共。もう、いいから……アビー……それにベッティーにリップリ。だって、私が食べなかったのも事実。そして同時に、私が食べようとしていたのも事実なのだから……」
「……え?」
「私はあの時、あなた達三人の言葉を信じ切っていなかった。なのに、それでもあのお菓子を目の前にした時、結局は我慢できなかったの……。
『これはいけないことだ』と心のどこかで思いながらも、私はあの時、自分の欲求を抑え切れなかったのよ……。本当に情けないと今でも思う」
エレノアはそう言った後、メルを改めて正面に見つめ、口を開いた。
「メル、あなたが言う通り。私は、最低の卑怯者で間違いないわ! いざとなれば、この三人に責任を全てなすりつければ良い、そんな軽薄な思いがあったのも事実だったんだから。こんなにも卑怯なことはない。
私は、あの時の自分自身の中にあった心のあり方・卑しさを思い出す度に、自分自身が凄く惨めに思えてくるのよ……今でもよ」
「……」
エレノアはそう言い切ると立ち上がり、屋敷管理人であるスコッティオを直視し、可能な限りその感情を抑えながら言った。
「もうお分かりになったかと思います。私は……この屋敷には、相応しくない人間です。ですからどうぞ、このわたくしめを解雇して頂けたらと……」
全てを言い切ったあと、深々と頭を下げるエレノアをスコッティオは困り顔に見つめ、吐息をつく。
そして、メルの方はどうかと覗い見つめた。
メルは思ってもみないエレノアからの告白に、後ずさり動揺している様子だった。
そんなメルの様子を、スコッティオは満足に思い小さく笑み見つめ軽く頷き。再びエレノアの方を向いて、口を開いた。
「……エレノア。あなたの気持ちは、よくわかりました。確かに……話を聞く限りでは、色々と問題もあった様ですねぇ…」
「……はい。もう、覚悟は出来ております」
エレノアは真剣な表情をして、そう言った。
この時、この場に居合わせたメイド達の誰一人として、口を挿むことが出来ずに居た。あのベッティー達でさえも。それ程までに、今エレノアが告白した話の内容は、身につき刺さる程だったのだろう……。
スコッティオはそうしたメイド達一同を見渡したあと、改めてエレノアを見つめ口を開く。
「エレノア、この件については内容が内容なだけに。私一人が今すぐに決める訳には参りません。数日中に、ケイリング・メルキメデス様にもお伺いしたあとで――」
「その必要はないわ!」
その一言に、メイド一同が驚き、屋敷二階へと続く踊り場を見る。
と、そこにはケイリング・メルキメデス様が真剣な眼差しで頬杖をついて見下ろして居た。その隣には、心配そうな表情のシャリルやファー・リングスという人も居る。そしてカジム管理長も傍に居た。
エレノアはこの屋敷の主人である人物の気迫に怯えた様に体を震わせ、顔も青ざめていた。その主人であるケイリングは、頬杖をついたまま厳しい口調でこう聞く。
「エレノア……あなたが今さっき言った、『この屋敷に相応しくない人間』ってさ。具体的に、どんな人のことなのかな?」
「え? それは……私などにはわかりませんが…」
「……わからない? 判らないのに、アナタはそんなことを言った訳?」
「申し訳ありません……ですが、少なくとも私の様な者は不適切であるのではないかと……」
ケイリング・メルキメデスは、それを聞いて吐息をつく。そして次にメルの方を向き聞いた。
「――メル!」
「あ、はい!!」
メルは、自分が問われるとは思っても居なかったらしく、かなり驚いていた。そんなメルの様子を見て、ケイリングは呆れ顔を見せていた。
一方、スコッティオの方はというと……困り顔を見せている。
そしてシャリルは相変わらず心配そうに、ハラハラとしながらメルのことを見つめていた。
「メル、あなたはさっきのエレノアの話を聞いて、正直なところどう感じた? やはり彼女は、この屋敷に相応しくない人物なのかな?」
「……」
メルは黙ったまま、困り顔を見せている。
そんなメルを見かねてなのか? メルの直ぐ傍に立っていたエレノアが、メルだけに聞こえる声でこう囁いた。
「メル……アナタは思った通りのことを、正直に言えばいいのよ。私はどの道、もうこの屋敷に残るつもりはないのだから」
「――!?」
メルは思わず、エレノアの方を驚いた表情で見つめる。
そして……考えた末に、メルは真剣な面持ちで顔を上げ口を開いた。
その内容は、メイド一同、みんな『ギョッ!?』と驚愕の顔を見せる程のものである。それは……頬杖をついたままの主人であるケイリング・メルキメデスさえも、思わず正視さえる程の威力であった。そしてこの時のシャリルの心配は、もう絶頂に達してしまう。
「エレノアさんが仮にもし、『この屋敷に相応しくない人物』なのだとすれば、この場に居るわたし達みんなが『相応しくない人物』ってコトになってしまうのだと思います!」
「――メ、メル!? ちょっと待ちなさい!!」
思わずエレノアが口を挿もうとするが、もうメルの勢いが止まることはなかった。
「だって! 私なんかいつも、嫌なことがある度に、ベッティーやリップリやアビーの悪口を考えたり。そればかりか、神様の悪口を考えたりもしているわ! そうすれば少しだけ自分の気持ちが救われる気がするのよ……。
そりゃあ……それはいけないことだと思っては居るけど。でもね……そうやって想像するだけで、その時の自分の中の嫌なモノや嫌な部分を消し去ることが出来るの。するとね……他の人やモノに当たり散らさなくても、ちゃんと自分の中で消化されるから。わたし自身は、そのことを決して悪いことばかりだと言い切れるほどに思っていません!
もちろん、同時に……良いことだとも、思ってないんだけどね?
むしろこの場合に悪いのは、その対象とされる人たちの普段からの行いの方にあるのだと、わたしはそう思う様にしているの!」
そこまでのメルの話を聞いて、ベッティー達三人組は、かなり頭を抱え込み困り顔を見せていた。そして他のメイド達の多くは、ただただ苦笑い、三人のことを気の毒そうに見つめている。しかしそれで、メルの勢いが止まることはなく、まだまだ続いた。
「これは、わたしだけに限ったことではないと思うんです! 人それぞれだとは思うけど……でも! 大なり小なり、みんな心の中にやましいことの一つや二つくらいは潜めていながら。でも、それを面には決して出さず。表面上は、良い子ぶってるだけなんだと私は思います!」
メルのその言葉には、皆一同、改めて驚愕の顔を見せていた。
「……それで?」
ケイリング・メルキメデスは、メルを正面に見据えたまま瞬間だけ呆れた様な、困った様な実に複雑な顔を見せていた。が、間もなく真剣な眼差しで再び頬杖をつき、そう聞いていた。
メルはそこで息を飲み込み、勇気を振り絞って口を開く。
「ですから! それがもし、今エレノアさんが言った『この屋敷に相応しくない人物』なのだとすれば……わたしを含め、ここに居るみんなもきっと『この屋敷に相応しくない人物』ってモノに当てはまってしまうのではないでしょうか?
少なくともわたしは、そう思います!」
「……」
この場に居合わせたケイリングを含めた全員が、そんなメルの言葉を受けて、しばらくの間だけ静まり返った。
この屋敷の主人に対するメルの発言は、余りにも無謀で、愚かだと思えたからだ。場合によっては、このまま解雇、ということだった有り得る。そういったメルに対する心配や張り詰めた緊張感が、しばらくの間この場に漂い流れ続けていた。
そして――、
「――ぷっ♪」
その場の緊張の糸を切ったのは、他でもない。この屋敷の主である、ケイリング・メルキメデス本人であった。
「ではメル、つまりはエレノアがそれに当てはまるのだとすれば。この屋敷の主人であるこの私ですらも『この屋敷に相応しくない人物』になってしまう、と……そう言いたい訳ね?」
「え? えぇ……」
初め、問われたメルは瞬間だけ悩み顔を見せていたが。間もなく力強く頷いて言った。
「あ、はい! わたしは、そうなると思います!!」
メルの確信的で真剣な表情と眼差しを見つめ。ケイリング・メルキメデスは『つくづく面白い子ねぇ~♪』とばかりに思わず満面に笑み、次にスコッティオの方を向き問うた。
「スコッティオ! 今のメルの意見を聞いて、
スコッティオは一瞬だけ、ケイリングからの不意を突いた問いかけに驚いた顔を見せていたが。間もなく「ええ……そうですねぇ」と零し。エレノアとメルを改めて真面目な表情で交互に見つめ直し、吐息を一つつき口を開いた。
「そうなると……エレノアを解雇した途端、ここに居る誰一人としてこの屋敷には居ることが叶わなくなりそうです」
スコッティオはメイド一同をゆるりと見回しながらそう言い、次にやれやれといった困り顔で肩を竦めて見せ、「ええ……もちろん、この私も同じですよ。エレノア」とエレノアの方を見つめながら繋げていた。
だけどこの時のスコッティオにとってそれは、実に笑い話にもなる、とても滑稽なものだった。
エレノアはそんなスコッティオの言葉と慈悲深い表情を受けて、涙目になりながらも戸惑う。そしてケイリング・メルキメデスの表情からも何かを察し、「あの……しかし、それだと…」と困り顔に言う。
おそらくエレノアは、エレノアなりに。この件のことでずっと長い間考え続け、今回の結論に達していたのだろう。今のエレノアの動揺と戸惑いは、それを確かなほど物語っていたからだ。
「まあ……ここで一つだけハッキリと言っておくけどさぁ~」
ケイリングがエレノアとメイド達一同を見回しながら、そう口を開き言い始めたのだ。
「私は、ウソつきで不誠実で不正直な人は余り好まないの。そして……やましいことをやっていても、反省すらしない。むしろ、開き直るくらいある人は、もっと嫌い。近寄りたくもないわね。
人は誰にだって、欠点の一つや二つくらい大抵あるものよ。例え目立たなくても、過ちの一度や二度くらいなら誰だって経験する筈。だけどそれらは、その後の対処の仕方によって、その人の価値が決まってくるものだと思ってる。
それらの困難や苦難がやって来る度に、背を向け、逃げ出したり誤魔化したりするのはとても簡単なことなのかもしれない。
でも、そんなモノは、その場限りの対処法よ。なんの解決にもなっていない。私はそんな人生を歩みたいとは思わないし、そんな人と共に、歩みたいとも思わない。
エレノア……今、決めるのはアナタ。
アナタの中の正直な心は今、『どちらを選びたい』って思っているのかな?」
「……」
長い沈黙が続いていた……。その間エレノアは俯いたままで静かに何かを考え続けている様子だった。
――そして、
「ベッティー……リップリ…アビー……それに、メル」
エレノアはそれぞれに話かけながら見つめ、繋げ言った。
「私はずっと、アナタ達には申し訳ない、悪いことをした、って思い続けていたの……。本当になんて言ったらいいのか……どうしたら許して貰えるのか、それすらも今では判らなくなっている。
本当にごめんね…こんな私で……本当にごめんなさい…許して」
その時の素直なエレノアの問い掛けに、メルはそんなエレノアに抱きついて言った。
「もちろん! もちろんだよ……エレノアさん!!」
「そんなのっ、辺り前でしょう! 本当に謝らなければならないのは、私たちの方なんだから!」
「ああ、そうだよっ! ベッティーが言う通り、エレノアさんは何も悪くない」
ベッティーとリップリもそれに対し、笑みを零しながら頷き。アビーは余りの感動と安心からだったのか? その場で再び膝を崩し、「よかった、よかったよぉ~……」と言いながら泣き出す始末。それにはみんな苦笑ってしまう。まあ、良い意味でね?
エレノアは、次に他のメイド達にも視線を移す。
すると、その場に居合わせたメイド達一同共に、エレノアに対して笑顔で頷いてくれていた。
それらを確認し終わったあと、エレノアは安心した顔をし。それから……二階の踊り場に居るケイリング・メルキメデスと屋敷管理人であるスコッティオへと順に視線を移し、改めて真剣な眼差しで見つめ口を開いた。
「ケイリング様、スコッティオ様……。このわたくしめに、どうかもう一度だけ、チャンスを頂けたらと……」
そうして、真摯にも深々と頭を下げている。
スコッティオはそれに遅れて、間もなく深く頷き。二階の踊り場に居る主人の方を、同じく真剣に見つめた。
それを受けて、ケイリングはふっと笑み。それから改めて、明るい満面の笑みを浮かべ口を開く。
「OK! 合格よ、エレノア♪ 今後ともよろしくね!」
「あ……はいっ!! あ、ありがとうございます!」
ホッとした顔を見せ、面を上げ笑み。ようやくエレノアは安心した表情を浮かべた。そんな彼女へ、メルを含めたメイド達一同が一斉に、それぞれの思いを乗せた満面の笑みを浮かべ取り囲み握手を交わし合っている。
エレノアは思わず、そんなみんなの気持ちに応え、感謝しながら、次第に涙を浮かべ今ある幸せを心に感じ涙した。
一方、そんなメイド達の様子をシャリルはどこか……羨ましそうに遠目に眺めていた。ケイリングは、そんなシャリルの様子に気がつき。スコッティオに声を掛けると、シャリルを伴い三階の執務室へと向かいゆく。
◇ ◇ ◇
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