第86話 三章 反撃

ラファエルはゆっくり首を振った。


「母さんのことは気になるよ。

 保養所にだってすぐにでも行きたい。

 でも先にみんなを助けなきゃ。

 いま助けないともう二度と会えないかもしれない。

 そんな気がするんだよ。

 僕にとっては、みんな家族だから」


クララは困ったように顔を背けた。


ラファエルは爪を噛む。


みんなを助けたい。


でもどうやったらいいのだろう。


「それなら積極的防衛という手段もあるわ」


ラファエルの悩みを予知したかのようにエマが言った。


「積極的……なに?」


「ここにいて」


エマは下水口を出て路地へとどんどん歩いて行った。


「おいっ。戻れよっ」


慌ててクララが呼び止めても聞く耳を持たなかった。


クララとラファエルはあたふたと排水溝の影から顔を出してエマの行方を見守る。


エマは通行人など気にするそぶりも見せずに自信をもった足取りで四つ角まで歩いて行き、壁に貼られていたポスターを一枚引きちぎって戻ってきた。


「何やってんだよ!」


クララが牙を剥いた。


エマは悪びれず言った。


どことなくその表情は笑っているように見えた。


「堂々としてれば意外と気づかれないものなのよ。それに……」


エマは破ってきたポスターを二人の鼻先に突き出す。


「ここに一番情報が集まってるはずよ。

 どうかしら?」


剥がしたポスターには、


あの憎らしいハンターのイラストと、事務所の住所が印刷されていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る