第77話 三章 再会
「それで、どうするんだ?」
火事でぼろぼろになった外套にマフラー、煤で髪を黒く染め、目深に帽子を被ったクララはラファエルに問いかけた。
「知ってる顔に聞いてみる」
ラファエルは小屋で見つけた野良着を着ていた。
サイズの合わないウエストを麻縄でくくり、裾は何段にも折り重ねている。
妙にちんちくりんな格好になってしまっているが、この混乱のなかでは誰も気に留める人はいなかった。
二日が経っていたとはいえ、現場はまだ生々しい焼け跡がそのまま残されていた。
がれきが山を作り、焦げ臭い匂いがあたりに充満している。
倉庫では団員たちがせっせと残骸を掘り起こして荷物を整理していたが、燃え残ったものも強い刺激臭でとても使えそうにはなかった。
この光景は否が応でもあのときの記憶を思い起こさせる。
クララは気を失いそうだった。
やや離れた位置からラファエルが顔見知りの団員に話しかけるのを見守る。
ラファエルは飼育係のビーノを見つけて声を掛けた。
「おおう、ラファエルじゃねえか。生きていたか」
抱擁を交わして無事を喜び合う。
「ビーノさんも無事で良かった」
「全然無事じゃねえよ。
象もカバも半分は離散していなくなっちまった。
虎に喰わせる餌もねえし、どうしようもねえぜ」
「ねえ、半獣人(デパエワール)たちがどうなったかしらない?」
「なんだ、まだエマに会ってねえのか!」
ラファエルは興奮に顔を紅潮させた。
「エマがいるの!?」
「ああ、他の奴は知らねえがエマなら倉庫の跡地でお前を探してるぜ」
「僕を?」
「飲まず食わずで手当たり次第にがれきを漁ってる。
女どもがどうにか半獣人(デパエワール)ってわからねえように変装させているが、まだ狩りは収まっちゃいねえ。
早くここから連れ出した方が良いぜ」
彼女たちのせいで火事にも遭ったというのに、ビーノの言葉からは怨み節は聞かれなかった。
それどころか心配までしてくれている。
ラファエルは軽い驚きを覚えた。
「ビーノさんは差別しないんだね」
「俺にとっちゃサーカスは家族だからな。
ここに残っている大半の連中もそうだ。
薄情なやつらはとっとといなくなっちまったからな。
ほら、さっさと行ってこい」
「うん。本当にありがとうっ」
ラファエルは目にうっすら浮かぶ雫を拭い、駈けだした。
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