第42話 二章 半端者(デパエワール)

エレーナははっきりと言った。


「そうだよ。レーナは半端者(デパエワール)にゃ。

 本当は駆除されて、生きてちゃいけない子にゃ。

 アンソニーの奥さんだっていたんだよ。

 子供も見てたのに止めなかった。

 一緒に笑って、レーナを馬鹿にして、

 ……子供にあんなのは社会のゴミだって言い放ったんだよ。

 それが真実。それがレーナたちのことなんだにゃ!」


「僕はっ!」


ラファエルは信じられなかった。


エレーナは、


普通の、


ちょっとおっちょこちょいで食い意地は張っているけど、


心の優しい、


一人の少女でしかない。


「僕はっ……僕はそんな風には思わない。

 だって、だってエレーナは普通の子と何も変わらないよ」


気づけば泣いていた。


涙や鼻水がぼたぼたと顔を伝って流れ落ちる。


「にゃっ!

 冷たっ」


「うぅ。ごめ……ぐすっ」


「泣かないでにゃ。

 つられてレーナも泣きたくなっちゃうにゃ」


二人でしばらくえぐえぐと鼻を啜る音だけが響いた。


「やっぱりこんなのおかしいよ」


「……」


「僕からも言うから、お願いだからこれに慣れてしまわないで」


「やだ、やめてにゃ。

 そんなことしないで欲しいにゃ」


「だって」


「だっても何もないにゃ。

 いまなら我慢できる。

 でもこれ以上エスカレートしたら、レーナはもうわからないにゃ。

 だから、絶対にやめて。

 これ以上の波風を立てないで欲しいにゃ」


エレーナはまだ濡れたままだった衣装を元あった場所に戻してくるように言った。


「レーナのことだから、レーナの思うとおりにさせて欲しいにゃ。

 おねがいにゃ」


ラファエルは拳を震わせて、しぶしぶと物見櫓を下りる。


「絶対に……おかしいよ」


つぶれるほどに胸が痛かった。


ラファエルは走った。


とにかくこの場から離れなければ、どうにかなってしまいそうだった。

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