第2話 ハルとの生活

「ハル…? ここに買っておいたポテチがなくなってるんだけど?」

「うん、結構イケるねアレ」

「はぁ?」(威圧)


 ハルと暮らす事を決めた次に日に早速これだ。こいつ……しれっと嘘をついていやがった。私はノーテンキにくつろぐハルを鬼の形相で見下ろしながら注意した。


「あんた……確か昨日お腹は空かないって言ってたよね?」

「言ったけど何も食べないとは言ってない」(キリッ!)


 開き直って謝るどころか偉そうな態度まで見せるこのぬいぐるみの態度に、私の堪忍袋の尾は呆気なく切れた。勢いよくそのモフモフの体を掴むと、無言で力いっぱいぶん投げる。

 ブオンという空気を切る音と共にぬいぐるみは壁に激突した。


「ふぎゅあ!」


 どうだ! ポテチの恨みはこんなもんじゃないぞ!


「ま、待って! 謝るから! もうしないから!」


 ハルを壁に思い切りぶつけた後、そのまま床にも叩きつけてグーパンをかまそうと構えたところでハルから泣きが入った。本当に約束を守るのか全く信用出来なかったけど、こいつ見た目は可愛いぬいぐるみなんだよなぁ。

 私としても何だかこれ以上はかわいそうになって来たので、今回は雷を落として許す事にした。


「今度やったら容赦しないからね!」


 まぁ、これだけ恐怖を与えればまず二度と間違いは起こさないでしょ。一応今度からおやつは鍵付きの場所にしまう事にしよう。

 さて、問題がひとつ解決した所で私はハルに質問してみる。


「向こうの世界じゃあんた何やってたの?」

「普通に公務員だったよ」

「うっそだぁ~」


 ハルの話は適当に聞いていると結構面白い。これがいい暇潰しにもなっていた。


「ハルのいた世界って生き物みんなぬいぐるみなの?」

「違う違う……。向こうじゃ僕らも普通に人間の姿だよ。こっちに来ると身体がぬいぐるみになるんだ」

「何それ? 変なの~」


 でも学校でこの事を話せないのはちょっと残念だなぁ。話したらこっちの方が残念扱いされるだけだもんね。だからハルの事は私だけの秘密。

 クラスメイトにも友達にもお隣の幼なじみにも家族にも内緒。私だけのトップシークレットなのだ!

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