第5話 つまんない嘘

サイコパスって知ってますか。


なんか、危ない人のことかな?

犯罪者予備軍みたいな・・・


少し違うと思う。

犯罪者なんてたくさんいるだろ?

生きるために仕方のないことだってあるさ。


俺は、人と何かている気がする。

例えば、こんな感じに・・・



「あなたが人の嘘を見抜く方法は?」



皆はこんな回答をしていた。

「本人に問い詰める」

「本人をよく観察する」

「周囲の人に裏をとる」

「物的証拠を探す」


なんで、そんなことをするのだろうか?




俺の回答


「そいつと同じ嘘をつく」




_____________________________________



「なあ、金谷って中野さんと付き合ってるの?」

「そうだけど」

「やっぱりそうなのか!?よく二人でいるもんな!」

「でも、中野さんは付き合ってないって言ってたよ?

 恥ずかしがってるのかな?」


中野さんは、なんで嘘をついているのだろうか?

中野さんと付き合っているってことは隠した方がよかったのかもしれない。



「ああ、さっきのは嘘だ」

「ええ!?」

「マジかよ!?」

「何でそんな嘘つくんだし」

俺は、口角を釣り上げ笑顔を浮かべた。

「ごめん、少しからかったんだ」


その時だった。

「えー、金谷君、中野さんと付き合ってなかったんだ?」



近くにいた、女子が会話に割り込んできた。

名前は市姫いちひめさん。

たしか、市姫さんも”彼女にしたいランキングトップ5”のメンバーだったはずだ。

最近分かったことだが、このランキングには男子バージョン、

すなわち”彼氏にしたいランキングトップ5”らしきものがあるらしい。




市姫いちひめさんは、中野さんと違い女子にしては高めの身長に加え、

スタイルだってモデルのように細い。

それでも、女性らしい丸みを帯びているのが制服を着ていてもわかる。

簡単に言えば、テレビや雑誌で出てきそうな女子だ。


「そうだけど、何?」

俺は、目が笑えていないのをごまかすために、

少し目を細めながら聞いた。


「いや、金谷君のことって結構女子の間でも噂が流れているんだよ?

 だから、なんとなく気になって」


「そうなんだ」


「ねえ、誰とも付き合ってないなら、今度一緒に遊びに行かない?」

「別にいいけど」

「決まりね!」


「おいおい!金谷、ずるいぞ!」

「市姫さん。僕たちも行ってもいいですか?」


市姫さんは少し大げさに考えている仕草を見せる。


「うーん、今回は金谷君と二人だけがイイかな。ごめんなさいね」


男子の奴らは「ショック!」って言いながらも、

市姫さんとの談笑をその後も続けていた。







この日の放課後、

俺は、いつものように中野さんと一緒に帰ろうとしていた。


最近では、約束などしなくても、毎日中野さんを学校から家まで送るのが、

俺のルーティーンワークになりつつある。


しかし、今日は違った。


「金谷君、一緒に帰ろ!」


市姫いちひめさんが陽気に話しかけてきた。

なぜか周囲の人が、俺達のやり取りに注目している。

そして、隣の席の中野さんも俺と市姫さんに目を向ける。


特に中野さんと下校する約束もしていないため、断る理由もなかった。


「いいよ」


「え?金谷君・・・」

中野さんが、小声で俺を呼ぶ。


(中野さん、どうしたの?)

市姫さんが俺よりも早く反応した。


「中野さんって金谷君と付き合ってるわけでもないんでしょ?

 今日、金谷君がそう言ってたよ?

 じゃあ、私が一緒に帰っても問題ないよね」


「え・・・」


中野さんは、黙りこくる。


なんだか、今日の中野さんは静かだ。


「金谷君、行こっか!」

「うん」


市姫さんは俺の腕に絡みつくと、そのまま教室を出て行った。

背中に、何人かの視線を受けた気がしたが、

なぜ見られているのか分からなかった。


この日を境に、俺は中野さんとではなく、

市姫さんと下校するようになった・・・




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