第6話「越谷の代表」(2)

「なんと、あそこに【東の龍虎】こと、虎王さんとRyubiりゅうびさんがいらしているのです。二人とも若いのに、すごく強いのです」


 予め決められていたのだろう。スポットライトが庸介を中心にすぐさま当てられる。

 もちろん、その光の中には倫も入っているが、会場中の注目と拍手の対象には入っていない。


 そして倫は気がつく。緋彩の視線も、決して自分に向けられたものではなかったのだ。一瞬でも、勘違いして舞いあがった自分が恥ずかしくなる。


 だが、そんな倫に気づく者などいるはずもない。庸介も流美も現状に戸惑っていて、それどころではないのだ。


「矢面さん、どうです? 龍虎さんたちのチームに戦ってみてもらっては?」


「なーるほど。緋彩ちゃん、それはナイスアイデアですよ! ……ならば、わたくしも凄い人を見つけていますよ。なんと、激戦区である西東京地区のトップテンに名を連ねるAROUSERアロウザーの【池袋マックス】さんです!」


 ちょうど倫たちの反対側にある二階席にもスポットライトが当たる。

 そして、そこに座っていた者たちが、会場中央の巨大モニターにも映しだされる。


 それは確かに、最近読みあさった【月刊アロウズ】という電子情報雑誌で見かけた顔だ。

 その横には、やはり金髪で、黒光りするウェスト丸出しの服装をした相棒の女性も並んで立っている。


(……なーんだ。最初からピックアップされていたのか)


 ここまでくれば、倫にも筋書きが読める。

 決して運が強くて、庸介はイベントチケットを手にいれたわけではない。

 単に、イベントの地「越谷」の代表として招待されたのだろう。

 そして、向こう側にいる目つきの悪い金髪の高校生【池袋マックス】も同じように招待されたのだ。


「なんか、謀られたみたいで、ちょっと嫌な感じね」


 流美が細い眉をしかめる。


「でも、いいじゃんか。そのおかげで、一番最初にプレイできるんだぜ! なあ、クキリン!」


「えっ! 僕もなの?」


 庸介に肩を叩かれて、倫はキョロキョロと周りを見まわして、オロオロとしてしまう。

 一気に多くの視線に囲まれ、身分不相応のプレッシャーに冷や汗がでる。

 名うての【東の龍虎】の新しい仲間だと思われたのだ。その正体や実力によけいな期待フィルターがかかり、視線が集まるのは仕方がない。

 しかし、倫にはいい迷惑だ。


「あのなぁ~。なんのために、三人招待なんだよ。三人チームができるようになったからじゃんか。三人で参加しなくてなんの意味がある!」


「そりゃそうだけど、僕は初心者で……」


 一応、ある程度の下調べはしてきた。それに友達二人の観戦もよくしていた。

 しかし、実際にプレイするのは、本日初。正真正銘の初心者である。当然ながら、装備だって初期装備しかない。


 確かに、AROUSEアロウズというゲームには、レベル制はないし、格闘対戦ゲームやRPGでおなじみの体力ヒットポイントは、全員同じ一定値しかない。

 だから、後から参加しても古参に勝てないということはないと言われている。

 しかし、それは「しばらくやりこめば古参と並べる」という意味で、初心者がいきなり古参と戦えるというわけではない。


 たとえば、体力は確かに一定だが、最大保持魔力というパラメーターは、戦闘で得たポイントで増やすことができるようになっている。

 AROアローを使用するには、魔力を消費することになるので、初心者と古参では使用できる武器や戦術に大きな差がつく。


 また、AROアロー自体も、ポイントで強化やカスタマイズを行うことができる。

 AROアローにセットする【メモリア】と呼ばれる魔法や技、属性を加えるオプションも、ポイントで入手する必要性がある。


 さらに大きな違いは、魔装具アルマトゥーラシステムという存在だ。

 魔法の鎧という設定らしいが、ゲーム的に簡単に言えば、バリアみたいなもので、ダメージカットの効果があるのだ。

 高額なポイントで手に入れた魔装具アルマトゥーラは、実質的に体力が数倍あるのと変わらなくなる。

 ともかく、戦闘で得るポイントが重要になるのだ。


 倫もユーザー登録をした時に、初期ポイントをもらっている。そのポイントで手に入るのは、せいぜい初期武器のみ。

 しかたなく、剣の初期装備【魔法剣・序マギアソード・ファースト】をポイント交換していた。

 残ポイントは、それで0となった。つまり、魔装具アルマトゥーラなんて夢のまた夢だ。

 常識的に考えて、こんな初心者がトップクラスのチームに入っても、ただの足手まといだ。

 いつか庸介と一緒にとは考えていたが、いくら何でも早すぎる。


 だから倫は、断ろうとして口を開く。


「大丈夫だ!」


 それよりも先に、良介の朗々とした声が響く。


「オレたちが守ってやるから!」


 自信たっぷりの庸介に、思わず倫は肩を落とす。

 ヒーローに守ってもらうのは嬉しいが、やはりそれだけではつまらない。


「でもさ、少しは役に立てるようになってから……」


「でもね。最初は弱くてもしかたないし、とにかくやってみないことには、わからないじゃない? 負けてもポイントは、はいるんだし」


 流美まで庸介側にまわる。

 完全に倫は圧されていた。この二人が敵に回ると、とてもじゃないが勝てる気がしない。


「そりゃそうだけど、最初だからこそもう少し……」


「うん。わかっているけど、せっかくだから三人でやろうよ、ね? クキリンとも一緒にやりたかったんだ!」


「そうそう。三人でやろう!」


 流美の笑顔と、庸介の勢いに押され、倫は思わず「わかった」と答えてしまう。


 しかし、本当はここで頑張って断っておくべきだったのだと、倫は後で悔やむことになる。

 とは言え、それは無理な話だろう。

 まさか夢にも、ARの化け物が出てきて庸介を殺すことになるなど、この時は思えるわけもなかったし、ましてやその後、庸介が蘇る・・・・・など想像もできなかったのだから……。





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