第32話 天龍と地龍、時空の旅へ

(信長殿、天龍と地龍を召喚します)


 清明の声と共に巨大な白い天龍と漆黒の地龍が天空に現れた。

 その巨大さは<ブラックナイト>にも匹敵するほどで、白い天龍は翼をもつ龍に似せて作られた天駆ける船であった。


 しかし、地龍はただの黒く巨大な亀のようなに見えたのだが、気のせいだろうか。


(清明殿、当然、わしは天龍をもらっていいのだろう?)


 信長が一歩も譲らないという姿勢で清明を見た。


(それは当然です。私も地龍の方が気にいってるので、何の問題もないです)


 清明は冷静な声で対応した。


(地龍の方が結構、性能がいいとか?)


 信長は不審そうに尋ねた。


(兄弟艦でほぼ同じ性能ですし、まあ、デザインが好みなのです)


(そういうもんかのう)


(人、それぞれですな)


 清明は亀が好きということで納得した信長であった。


(では、清明殿は飛鳥時代に飛んでくれ。わしは少し時を下る。メガネたちを鍛えなくてはならないので、殿しんがりもわしらが勤めよう)


(頼みます。こちらは神沢優、月読波奈、安東要でこじんまりと行って参ります。波奈殿がいなくなるとオタクたちが淋しがるかも知れませんが、適当に誤魔化しておいて下さい。その代わりに式神を置いていきます。雛御前!)


 清明が命じると、雛人形のような十二単じゅうにひとえ姿の幼女が現れた。


「信長さま、私たち<式神衆>が清明さまの代わりにお仕え致します。何なりとお申しつけ下さい」


「何というか、美少女の式神はいないかのう」


 十二単じゅうにひとえ姿の幼女が美少女に変化した。


「おう、これはなかなか」


「御気に召してもらえたでしょうか?」


「とりあえずだな、<式神衆>で美少女軍団を結成してもらえると、上手く騙せそうじゃ」


「わかりました。そのように手配させて頂きます」


 雛御前は地龍に一瞬でテレポートして、総勢108名の美少女軍団を引き連れて戻ってきた。


「なるほど、これなら行けそうじゃわい。とりあえず、総選挙をして<式神7>を決めなくてはならないな。楽しみじゃわい」


 何だか自分の趣味に走ってるような信長だが、本当に大丈夫かいなとおもう清明であった。

   




     †




「雷神斬!」


 夜桜は雷属性の聖刀技でアリス・テスラのプラズマを抑えていた。

 時折、ハネケやメガネ隊の一斉攻撃を叩き込むのだが、全部の攻撃を凌がれていた。

 信長と清明が話をまとめてるうちに、メガネたちはアリス・テスラと激闘を繰り広げていた。


(夜桜! 信長さまから撤退命令が出た。あの白い船<天龍>で跳ぶ・・らしい)


 メガネからのテレパシー通信である。


(跳ぶ?)


 夜桜は疑問を投げかける。


(少し時代を下るらしい。清明さまは飛鳥時代に跳ぶらしい)


(了解です。だが、撤退することが最も難しいですよ)


(大丈夫、私が大技を叩き込むから、その隙に撤退して下さい)


 神沢優がそういうと、月読波奈も言葉を継いだ。


(波奈も時間を稼ぐ。大丈夫)


 月読波奈はモニター越しににっこり笑った。


(では、ここは二人にお任せします)


 夜桜機はハネケと共に後退して、神沢、月読機と交代した。


(五色龍の術! 龍神召喚!)


 神沢優の双眸が黄金の光を帯びる。

 巨大な黄金の龍神が現れて、アリス・テスラを圧倒した。


(ふっ、なかなかやるわね。だが、これはどうかしらね)


 アリス・ステラが左手でプラズマを弄びつつ、右手にもプラズマを生じさせた。


(消えてなくなってしまいなさい!)


 アリス・ステラはふたつプラズマをメガネたちに向けて投擲した。

 そして、ふたつのプラズマが衝突した時、そこにビックバンにも匹敵する爆発が生まれ、龍神もろともメガネたちを吹き飛ばすかに見えた。


(ここは波奈にお任せ! <時空眼>オーバードライブ!)


 その瞬間、月読波奈の銀色の瞳が輝き、アリス・ステラとプラズマ爆発の空間の時間が停止した。

 

(限定空間の時間停止か?)


 メガネが真相を言い当てた。


(波奈、凄いでしょう)


 メガネも言葉もなかった。

 天龍と地龍にメガネ隊と神沢隊が全機、収容された。

 

(では、清明殿、しばしの別れだ。波奈殿も達者でな!)


(のぶちん、天ちゃんも、またね。今度、会うのは関ヶ原かもね)


(おい! 波奈殿、そうなのか?)


 漆黒の地龍は空間に溶け込むように消えていった。


(信長さま、私どももそろそろ)


 雛御前が天龍をコントロールしてくれるらしい。


(分かった。では、高松城水攻めの戦場へ!) 


(また、戦場ですか?)


 メガネが驚く。


(いや、少しサルを驚かせてやりたいのじゃよ)


 信長は自分のいたずらにわくわくしているようだった。


(………それはちょっと悪趣味、いや、なかなか面白いですね)


 メガネは仕方ないなあと呆れつつも、ちょっと楽しみだった。

 天龍もまた、時の流れを下って、高松城水攻めの時空へと跳躍した。


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