第30話 <ブラックナイト>侵入

「メガネ君、例のコンビネーションやるわよ!」 


 神沢優が叫ぶ。


「了解」


 メガネが答える。


「五色龍の術! 火龍召喚!」


 神沢優はサイバーグラスを外した。

 黄金の双眸が煌き、<火龍>を出現させて、その炎が<ブラックナイト>の船底を焼く。

 <ブラックナイト>の装甲が加熱していく。

 

「水龍剣、氷龍斬!」 


 そこへ、メガネの水龍剣から放たれた氷龍が襲いかかる。

 温度差によりさすがの<ブラックナイト>の装甲にも亀裂が走る。

 神沢隊の30機がそこにハンドミサイルの集中攻撃を仕掛けた。

 装甲が破損し穴が開いた。


「神沢隊、メガネ隊、全機、破損部から突入するぞ!」


 メガネの号令で<ボトムストライカー>全機、<ブラックナイト>内部に突入する。

 メガネ隊の30機はローラーブレード機動で<ブラックナイト>の内部を縦横に走り回って破壊していく。

 神沢隊はホバー機動の<ボトムストライカー>が多かった。

 

「メガネ隊長、お客さんの歓迎ですよ」


 副隊長のザクロがレーダーを見ながら報告する。

 レーダーに赤い光点が数十機、映っている。

 おそらく、<薔薇十字騎士団>だろう。


「ザクロ、お前に迎撃は任せる。俺は夜桜と一緒に<ブラックナイト>のエンジンルームを目指す。なるべく全機生還させろ」


「無茶な命令ですが、了解です」


「無事を祈る」


 メガネと夜桜は<ブラックナイト>の内部壁を破壊して、別ルートに外れていった。

 <薔薇十字騎士団>と遭遇しないように、敢えて迂回ルートを取ってエンジンルームに向かっていく。


 <ブラックナイト>は反重力エンジンを使用してると思われるのだが、その情報は信長の<魔人眼>によってもたらされていた。

 両翼にひとつづつ、中央にひとつ存在するらしい。


「夜桜、左翼のエンジンを破壊するぞ」 


「はい」


 メガネ機に夜桜機が追従していく。

 ブレードローラーが軋み声を上げて<ブラックナイト>の内部通路を走行していく。

 ザクロの率いるメガネ隊が壁となって、メガネの所には<薔薇十字騎士団>は一騎も現れなかった。

 

 だが、しばらくしてメガネ機はレーザー兵器の様な光線を左手の盾で受けた。

 球体のような兵器が空中に浮かんでいる。

 自律動作する防衛兵器のようだった。

 

 メガネは<ボトムストライカー>の速度を上げて突進し、<水龍剣>で球体を切り裂いていく。

 夜桜機も同様に聖刀<天羽羽斬剣あまのはばきりのつるぎ>で球体を破壊していった。


 だが、エンジンルームに迫ったメガネ機の前に意外な敵が視界に入ってきた。


 黒いフードを被った魔導師のような者が現れたのだ。


 メガネは構わず突進しようとしたが、機体が動力を失ったように動かなくなってしまう。

 夜桜機も同様のようだった。


「お前は誰だ?」


 メガネはその魔導師に話しかけて時間を稼ごうとした。


「我は魔導師アリス・テスラ」


 機械的なAIのような声音が返ってきた。


「そこを通してもらえないかな?」


 無駄だと思ったが、話が続かないので質問してみる。


「あなたたちは<ブラックナイト>から出て行ってもらいます」


 アリス・テスラは黒いフードから左手を出した。

 六本の針金のように多関節の長い銀色の指が見えない球体を持て遊ぶように動いた。

 掌の中にプラズマのような光球が浮かび、そこから象形文字のようなものが空間に流れていく。


 メガネと夜桜の<ボトムストライカー>が象形文字の光に包まれて、そのまま<ブラックナイト>の外に飛ばされていた。


「メガネ隊長、大丈夫ですか?」


 夜桜が訊いてくる。


「大丈夫のようだ」


 何とか機体は動くようになっているし、墜落しないで済んでいるようだった。

 見上げると、<ブラックナイト>の船底に<ボトムストライカー>数十機が見えた。

 どうやら全機、<ブラックナイト>から放り出されたようだ。


「振り出しに戻ってしまったようですね」


「そのようだ。だが、あのチート魔導師を何とかしないと、勝ち目はないぞ」


 確かにこちらの戦力で同じような能力をもつのは月読波奈ぐらいなものである。

 

「波奈ちゃん、何とかなりそうか?」


 メガネは波奈に話しかけた。

 波奈の乗る式鬼<銀鋼シロガネ ゼロ>がメガネ機の隣に上昇してきた。


「俺たちが突撃するから、あのチート魔導師の力を抑えてくれ」


「自信ないけど、やってみる!」 


 頼りなさげだが、ここは当てにするしかない。 


「では、いくぞ!」

 

メガネの号令で夜桜、波奈の三人は<ボトムストライカー>のエンジンを全開にして、<ブラックナイト>船底の戦場へと上昇していくのだった。

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