第9話 異界迷宮
「あれ、お空が小さくなってるよ」
月読波奈が崩落した地面の穴を見上げている。
確かにだんだん小さくなってるように見えた。
(晴明さま、何が起こってるんでしょうか?)
(まずいな、次元隔離じゃ)
(次元隔離?)
(奴らの常套手段じゃよ。この地下迷宮に取り残された約100名と地上のオタク軍団を分断して孤立させるのが狙いじゃ)
(晴明さま、兵法の基本でもありますね)
先程のメガネオタクが会話に加わってきた。
(メガネ君は何オタクなの?)
月読波奈が会話に参加してくる。
(諸葛孔明、三国志ゲーム、戦略オタクとでもしておこうか)
(めんどくさいんで、メガネ君でいい?)
(はい、大丈夫ですよ。メガネというあだ名には慣れてますよ)
(メガネ君はあれなの? 天才軍師とかなの?)
(いいえ、全く平凡なオタクですよ)
(だけど、ここで話に入ってくるということは重要キャラとか、そういうポジションな訳でしょ?)
(確かにラノベとか、小説のストーリー的にはそうなりますね)
(まあ、いいけど、何がいいたいわけ?)
(いや、それはこれからいいますよ)
(つまり、僕がごく平凡なオタクであるというのが逆に強みになるんです)
(文字数稼ぐために、もったいぶった言い方でここから話を徐々に膨らまそうとしてない?)
(いやいや、僕がそんな読者にすぐ見抜かれるような小細工やるわけないじゃないですか。ははは)
(では、単刀直入に言いますと、将棋に例えますが、かなめちんと神沢さん、波奈ちゃんは王と飛車と角で、この戦いは僕たちオタクたちの力で
(将棋に例える必要なくない?)
(―――参った、パスです。それでですね。僕たちオタクは僕も含め、最終的にはおそらく生き残ることができないと思うんです。ですが、戦争が如何に効率的に兵士を殺すか?というゲームだとしたら、オタクの妄想力を最大限に生かす、なるべく長く持たせる必要がでてきます。そこで僕の登場という訳です)
(833文字まで稼げたな。それはともかく、メガネ殿、なかなか見所があるの)
安倍晴明も少し感心していた。
(それでおぬしの策を聴かせてもらえないかの)
(それ、僕も聴きたいな)
安東要は存在感をアピールした。
(私も聴きたいな)
いるのかいないのか分からなくなっていた神沢優もちょっとアピールしてきた。
(では、後楽組は除いてですね、一般オタクは人形装甲をもつリアルロボットに搭乗させて生存率を高めます)
(はい、先生! 後楽組って何ですか?)
波奈が元気よく手を挙げて質問である。
(後楽組っていうのは『パーフェクトレッドソルジャーキリオ』オタクと『魔法少女魔女っ
(はい、先生、『パーフェクトレッドソルジャーキリオ』オタクって何ですか?)
(『パーフェクトレッドソルジャーキリオ』オタクっていうのは、一億分の一の確率で出現する特殊なDNAをもつ兵士で二刀流の使い手でチートな能力をもつゲームプレーヤーの戦闘スタイルを模倣したオタクたちです。今、映像で送られてきていますので、それを見てもらえればわかります)
単騎突撃してきたメイドロイドは式鬼≪
いつのまにか最前線では100体ものメイドロイドが湧きだしてきていたが、黒マントに赤い肩当てをつけた男たち10人ほどがロングソードの二刀流で撃退していた。
というようなドローンオタクのローアングル映像が安東要のスマホに送られてきていた。
波奈と神沢優も覗いていた。
((((なるほど))))
晴明も含めて四人同時にうなづいている。
(『魔法少女魔女っ
((((なるほど))))
(彼ら、彼女たちは今のプレイスタイルの方が力を発揮できますし、常に最前線で戦ってくれますので、自由にやらせておきます。たまに、休ませるためにリアルロボットオタクの部隊と入れ替えます)
(メガネ君、凄いじゃん)
波奈が絶賛する。
(平凡でも使い道あるわね)
神沢優も彼女的には絶賛に近い。
(メガネ君、やるね)
要もスマホで「いいねマーク」をSNSに送信した。
(わかった、ここの戦略はメガネ君に任せよう)
晴明も納得の説得力であった。
非常に平凡だが。
ということで、新キャラメガネ君の戦略も加わり、何とかなりそうな雲行きの一行であった。
時に3月2日の夕刻頃の話である。
東日本大震災が起こるという晴明の予言の日まで、残りあと8日ぐらいであった。
アバウトだが。
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