第7話 異世界侵攻軍
(名誉の戦死って、どういうことなんですか?)
安東要は晴明に向けて心話で再び尋ねた。
(東日本大震災を起こした本当の敵である≪異世界侵攻軍≫との戦いで、おねしの親父さん、安東龍一郎は戦死したのだ)
(≪異世界侵攻軍≫? それは一体、何なんですか?)
(安東君、それは私たち秘密結社≪
神沢優は晴明の声も要の心話も聞こえるらしくて、心話に混じって疑問に答えてくれた。
(そう、おねしは親父さんが亡くなってから、その地盤を引き継いで政治家の道を歩みはじめた。だが、この事実は伏せられた。それが親父さんの遺言だったからだ)
(どうして、そんな重要なことを隠したんですか?)
(親心というやつだろう。その戦いにお前を巻き込みたくなかったんだろうと思う)
(でも、もう、今は巻き込まれていますよ)
(そうじゃな。それはお前が真実に気づいて、それを願ったからじゃ。すでに不退転の覚悟ができている。そんなに恥ずかしい二ーハイソックスをはいた男の娘になってもお前の心は揺らぐことはなくたったということじゃ)
(いや、できれば脱ぎたいです。いつまでこんな恰好してればいいんですか? 男の娘になることが東日本を救うことに繋がるとは思えないんですが……)
(わかってないのう。男の娘になることで、お前は神沢優と月読波奈という最強の仲間を得た)
(そうよ。波奈はそんなかなめちんがとっても好き☆)
(申し訳ないが、わたしもそのスタイル以外のかなめちんを受け入れつもりはない)
(神沢先輩! あなたまで! 硬派なセリフ回しでとんでもないことを言うのはやめてください!)
(そうそう。私たちはカリスマレイヤーグループ≪
(グループ名が変わっちゃってるじゃないですか! いつのまに僕はデビューしちゃったんですか? あの悪夢のコスプレ映像がDVDになって永久に保存されるとか、勘弁してください!)
(すでにライブ映像はネット経由の
(≪
(全然、褒められてる気がしないんですが)
そういえば、さっきから皮膚が火照って焼けるような、ギラつくような視線が安東要の身体に向けられていた。
彼らは要たちを包囲するように
今は何故かその
こんな短時間にお揃いの制服をどうやって大量に調達できたのか謎であるが、熱狂的なファンなのかもしれない。
安東要は自分の男の娘としての魅力に戦慄した。
「お客さま、そろそろお時間となりました。延長されますか?」
清楚な黒服に白いエプロン姿の
そういえば、この
(話もあらかた終ったし、そろそろ、お会計するかのう)
要は晴明の言葉で席を立った。
「行ってらしゃいませ、ご主人様。
古風過ぎる。高齢者は一発でやられそうな粋なサービスである。
「プレゼント、嬉しい。かなめちん、波奈がもらっとくね」
月読波奈はプレゼントを両手いっぱいに抱えてご満悦である。
神沢優も無言でついてきている。
ザザッ!
要が店を出ようとした瞬間、女装カメラ小僧やオタクのコスプレーヤーが一斉に立ち上がり、会計に向かった。それはまるで鉄の規律で鍛えられた軍隊のような統率であった。
外に出ると空は晴れていて、アキバは歩行者天国になっていた。
この世界では3月1日から3日まで女の子の祝日となっていて、それに連動して数年前から『女だらけのコミックマーケット』が開催されていると波奈ちゃんが教えてくれた。
東日本の大震災や父親の安東龍一郎の死の謎を知って、安東要の心は空のように晴れやかではなかった。
だが、何か自分の心境が徐々に変化しているように思えた。
それはかつてへタレでダメダメだった安東要にとってはいい変化の兆しであるのは間違いなかった。
「ああっ! プレゼントがーーーーー!」
月読波奈がすっとんきょうな声で叫んだ。
安東要が振り返ると、
と思ってるうちに、唐草模様の風呂敷づつみが開いて中から無数の虫のようなものが空にばら撒かれる。
「まずい、安東君、伏せて!」
神沢優が安東要に飛びついてきて、彼を守るように道路に伏せた。
そこへ、上空から無数の虫たちが急降下して襲いかかってきた。
絶体絶命の危機に無数の影が駆けつけてきて、安東要を守護する壁を作った。
直後、爆発音と共に何かがさく裂するような風圧が襲ってきた。
「ドローン爆弾よ。大丈夫だった? 安東君」
神沢優に支えられて顔を上げると、青いミニスカポリスの制服に黒の二―ハイソックス姿のオタクたちが、強化アルミ合金製の盾を構えて、安東要を守るように守備円陣を組んでいた。
(そして、彼らこそが、わしの組織した
確かに、オタクたちの手首には青いモバイルウォッチがはめられている。
そんな超科学兵器を妄想たくましいオタクに持たして大丈夫なのか?
そして、たった数時間でそんな部隊を組織してしまう安倍清明の実力に、安東要はあきれて空いた口が
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