第二章:運命の学園祭

ギフテッド・プロジェクト

「――結局、どういう事なんだ?」

僕らはとりあえず席に着き、ラグエルに問う。

因みに席順は僕の右隣にシエル、その隣にラグエルが座って、左側に琴葉ことは、正面に悠里ゆうり、右側に弓月ゆづきでテーブルを囲んで座っている。

「はい。私はお二人と同じギフデッド・プロジェクトで生み出されたリロードの姓を持つラグエルです」

……僕は解るけど、その説明だとみんな理解できない。

「ギフテッドプロジェクト? なにそれ」

弓月はそう聞いてくる。当然だ、たいていの人はそう言うだろう。悠里や琴葉もよくわからなさそうな顔をしている。シエルに至っては半分くらい考えることを放棄していた。

僕はシエルの手を握って、口を開く。

「ギフテッド……つまり生まれながらの天才を人為的に作り出す計画だよ。クローン技術の応用で優秀な遺伝子同士の掛け合いを人工授精で、文字通り造るんだ」

言うと、今度はラグエルが説明を始めた。

「それで、私はお二人より後にできたので妹に当たるという訳です」

それを聞いてシエルが「お、おにい。おにいちゃ」となにか喋り始めた。

「お兄ちゃんの妹は私だけだもん!! 他に妹なんていらないもん!」

シエルはいきなり立ち上がってそう言った。

「シエル……」

僕の妹はシエルだけ。僕自身、自分に言い聞かせて来たけど、まさか目の前に現れるとは……。実を言うと、ラグエルのように他の被検体の存在は知っていた。だからシエルが一番望んでいる言葉をかけてあげられない僕だった。

本当に、どうしようか。

悩んでいるうちにシエルが僕に抱き着いて来た。僕は抱きしめ返すが、思考がまとまらない。まず、第一にラグエルが僕らに慕っている理由が解らない。

知っていると言っても知り合いじゃないし、被験者が兄弟姉妹扱いとは。

これは、ラグエルが歪んでいるのか、僕らが知らないだけなのか。

たぶん前者だろう。

「ところでラグエル。君、家族は?」

「いませんよ? 今は生活保護で暮らしています」

あー、僕らとの格差が酷いな。と考えていると皆が僕の方を見ていた。

「……とりあえず、今はなにも聞かないでくれないか? 時期が来たら全部話すから。今はあることを手伝って欲しい」

「それは、わかった。あることってのは?」

弓月が聞いてきた。

「ああ、学園祭だよ」

「学園祭……?」

悠里が結構面白い顔で戸惑っているので僕は説明をする。

「いつものゲームみたいなものさ。学園祭を盛り上げて来賓を満足させる。それだけ」

言うと、琴葉が「でも」と口ごもった。

「なに?」

僕は訊ねる。

「急にそんなこと言われても」

まあ、尤もだ。

「具体的にどうするかは、今度伝えるから」

と、そこで悠里が気を利かせた。

「じゃあ、取り敢えずラグエルちゃんを入れて遊びましょ!」

「っえ?」

ラグエルは驚き、目を見開いていた。

「ちょっ、いきなりどうしたのさ?」

弓月は悠里に突っ込みを入れるが悠里は知らぬ顔で「え~、だってまずは遊びからだよ」

そんなこんなで遊ぶことになったが、シエルが少し辛そうだったのが、とても気がかりだ。



我が家に帰ってきて玄関の扉が閉まるか否かぐらいで、シエルに押し倒された。

「……シエル?」

「お兄ちゃんの妹は……私だけだよね? ねえお兄ちゃん。……シエルを捨てないよね?」

捨てる? シエルを?

「そんなこと、するわけない。僕はシエル以外に妹なんていらないよ」

「本当?」

「僕の心は、決して揺れたりしないから安心して。だって僕は、シエルのために生きているんだから」

今も、昔も、これからも……。

僕はシエルのために生き続ける。それが僕の幸せだから。


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妹リトルシスター 遊秒むう @1224siro

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