馬脚舟
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「悪いけどニェンくん
この子尾樹はまだわたくしタクトフービも必要としているので差し上げることはできない
だが飛刀団諸君
喜びたまえ
馬脚舟を君たちに
貸してあげよう 」
なるほど
確かに良い話だ
盗賊団に物を貸すというのだ
ありがたい
借りた物を返さないのが盗賊だ
ありがたい
「ということなので少し馬脚舟について説明しておこう
ニェンくんは先程この馬脚舟をレイリョクで捕まえることができなかった
そうだね?」
ニェンもダラギャも
ただただ圧倒されるしかなかった
タクトフービは何でも知っているのかもしれない
この相手と一戦交えずに馬脚舟なる物を手に入れられるなら
幸運だと
さすがのダラギャも認めざるをえない
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「ところが馬脚舟はレイリョクで動くのだよ
ニェンくん
ただ…例えば畑を耕すのが上手い者が必ずしも歌も上手いとは決まっていないということだ
刀を飛ばしたりするレイリョクの使い方と
馬脚舟を動かすレイリョクの
使い方は違う 」
レイリョクを独自に研究しているニェンでさえも
タクトフービの話は理解を越えている
「まあ…あれだ…ニェンくん
とにかく馬脚舟に実際に乗って何度もレイリョクの実験を繰り返すことが大事だよ
きみなら必ず馬脚舟を操れるように
なれるよ 」
「馬脚舟は何に使う
道具なんだい?」
「いい質問だニェンくん
当然の質問はいい質問なんだ
馬脚舟にはいくつかの用途がある
馬脚舟は十二器のなかでも特別な非常に高度な道具なんだよ
馬脚舟は時と空間の
両方の乗り物であり
馬脚舟は二つある
二つある道具は十二器のなかで馬脚舟だけだ
でもそれだと十三器になってしまう
だから馬脚舟は本当は
一つなんだよ 」
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「二つなのに一つ?どういうことなんだ
タクトフービ?」
口を挟まないつもりだったダラギャが
堪らず
疑問を口にしていた
「それについては今はまだ
考えなくていいよ 」
タクトフービは爽やかな笑顔で言い放ったが
飛刀団の誰ひとり爽やかな表情の者はいない
タクトフービの話は
あまりにも難し過ぎる
だが
今では誰もタクトフービが狂人かもしれないという疑いは持っていない
難しい話だが
きっと真実であろうと思わせる説得力がタクトフービには厳然と
ある
「馬脚舟の一つの用途として…空を飛ぶ
というのがある 」
ニェンがすかさず質問した
ニェンの頭の回転の早さにはダラギャでさえ時々驚かされる
「つまり
あたいのレイリョクを鍛え上げれば
馬脚舟をレイリョクで操って馬脚舟に乗ったあたいは空を飛んで移動できると
そういうことかい?」
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