子尾樹





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タクトフービの声は明るい

表情も明るい


この男は面白がっているのだとダラギャは気づく


盗賊団を相手に

すらすらと話を進めてゆく状況に面白さを感じている


この男は自分が処刑されようとする瞬間さえも面白がることができるのだ


ダラギャは

青年としてこの世界に登場した

だから他人より人生について無知であるはずなのだが

妙に人生を深く理解しているようなところがある


失われた記憶

その期間に

とんでもなく教養を詰め込まれた

とダラギャは知っていた

記憶は戻っていないが必要な知識は

失われた年月からやってきてダラギャにいろいろな知識を与えてくれる


ニェンも似たような境遇である


ニェンは幼い日の記憶はあるが

どこで生まれたのかはまったくわからない


幼いときにある商人の家の庭に置かれていたらしい


商人は親切であり商人夫婦に子供がいなかったこともあり

ニェンを我が娘のように可愛がった




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ニェンはダラギャに対しても誰に対しても対等な態度をとる

ニェンは団の皆からあねさんと呼ばれていた


そのニェンのレイリョクについてタクトフービは話している


「ニェンは この棒のことを ネズミの尻尾と表現した

この棒は実際に子尾樹

つまりネズミの尻尾と

呼ばれている 」


いつの間にかタクトフービは飛刀団に講義する先生のようである


「十二器というのがある

誰か知ってる者は

いるかな?」


「… … … 」


「だろうね

まあ知らないだろうね

十二器とは十二個の便利な道具のことだ

あの道具は… 」


タクトフービは馬のような物体を子尾樹という棒で指した


「馬脚舟という 」


馬脚舟……

子尾樹……


先程からダラギャはタクトフービが解説する十二器のくだりが

どうも引っ掛かる


失われた記憶にそれらの情報が入っていたに違いない




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「君たち

この場に十二器のうち二つの道具がある

これは大変なことなのだよ君たち

ところで

この子尾樹はどのような道具か

知ってる者は?」


「… … …  」


「まあ知らないだろうね

この棒はレイリョクを増幅させるんだ

私タクトフービは

この世界でレイリョクと呼ばれている力を多少持ち合わせてはいるが

子尾樹はそのレイリョクを何倍にも高めてくれるんだよ

どうだニェンくん

欲しくて堪らない表情をしてるが

欲しいかね?」


この男はどこまで知ってやがるんだ

とダラギャは思う


ニェンはレイリョクを高めることに夢中であり

タクトフービが持つ子尾樹がレイリョクを増幅させる道具であるなら欲しいに決まっている


そんなニェンの気持ちを弄んでいるのだタクトフービは

とダラギャは思う










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